36.肝試しと屋敷の幽霊

 ショコラ達がウキウキで肝試しの計画を起て初めてから数日後。森の前に屋敷の住民が皆集まり、肝試しの説明を受けていた。


 「ルールとしては森の中を巡るだけ、ルートは森のあちらこちらにカンテラを灯しているから多分分かるよ。あと、この奥に屋敷があると思うけどそこに箱があるから勇気ある奴は取りに行くのもありだ」

 「箱?」

 「中身は見てからのお楽しみだよ」

 「じゃあ、早速最初のチームいくか」

 「はーい!」

 「ルビィ……置いてかないでよね」

 ショコラに呼ばれ、来たのはルビィとサフィだ。どこか楽しそうなルビィに対し、サフィはかなり怯えていた。ルビィはハルからカンテラを2人分受け取るとサフィの手を握り、森の中へ入っていった。



 「ちょっとルビィ……今足踏んだ?」

 「……サフィ、びびりすぎだって」

 「きゃっ! 何か来た!」

 「木の葉程度で驚かないの」

ルビィとサフィは森の中腹ぐらいのところに進んでいた。怯えるサフィをルビィが宥めながら進んでいくと、森の奥の方にたくさんのカンテラをつけたひときわ明るいところが見えた。



 「どうやらここがショコラ様が言っていたところね」

 「ねー、ルビィもう帰ろうよー怖いって」

 「何言ってんのよ、中にあるもの気になるでしょ」

 「そりゃ……きになるけどさ……」

 「はい、決定! さっさと入るよ!」

 「待ってよ、ルビィ!」

恐がるサフィの手を引っ張りルビィはどんどんと進んでいく。ルビィは扉を開けた。



 「失礼しまーす。って誰もいないか」

 「当たり前でしょ! 前の住民であるセレネさんにクロエ様は今私達の家に住んでるんだから!」

 「あ、そうね……」

 「もうルビィったら!」

 屋敷内は明かり1つ灯されておらず、さすがのルビィも少し警戒しながら進んでいく。すると、広間の方にテーブルがあり、小さな箱があった。ルビィはそれを手に取り、サフィの方を向く。


 「さ、これで後は帰るだけね……ってどうしたのよサフィ。震えて」

 「ルビィ、後ろ、後ろ!」

 「え? 何かいるの?」

サフィに言われ、ルビィは振り返る。するとそこには前髪を垂らした女性の幽霊がいたのだ。

 幽霊は何か言いたげに2人を見る。その目線に恐怖を2人は感じた。



 「いやーーー! 出たー!!!」

 「だから言ったじゃん! 何か出るって!」

 「す、す、すみませんでしたぁ!」

2人の反応にビックリする幽霊をよそに2人は豪速で屋敷を飛び出し、無我夢中で森を駆け抜けた。


 「おーおかえり、早かったな……ってどうした2人とも!?」

 「ぜー……ぜー……」

 「ショコラ……様……普通に……いました……」

 「何が?」

 「幽霊がいたんですよ!」

 「えー!!?」

いきなりのルビィのカミングアウトに驚く一同。そして、ホントに幽霊が出ると知り、騒然となった。



 「どこにいたんだ?」

 「クロエ様達が住んでいた屋敷にいました……銀髪で目が凄いらんらんと光ってて……正直怖かったです……」

 「嘘……ホントに出たんだ……」

 「お嬢様!?」

まさか噂はホントだったと知ったクロエは倒れ、セレネは彼女を介抱する。その言葉を聞いたショコラとハルは互いに頷いた。



 「次って多分、レイラとクレセだったけどちょっと調査に行ってくるわ。まさか噂が事実になるとはな……」

 「ショコラさん、うかうかしている暇は無いですよ」

 「……そうだな、いくぞ!」

ショコラとハルは不安そうな目を向ける住民達のよそに駆けだしていった。



 「……ここが例の場所か」

 「何だろ、すっごく久しぶりに感じる」

 「あ、そっかオマエは来たことあるもんな」

 「まさかまた騒動が起こってくるとは思いませんでしたけどね……」

 ハルはそう肩を落とす。ショコラが慰めで肩をポンと叩いてから2人は屋敷の中に入っていった。



 「そういや、あの2人どこで見たとかは言わなかったな」

 「でも、大広間に箱を置いたし、そこで出たんじゃ無いんです?」

 「どう考えてもそこしかあり得ないわ」

カンテラを照らしながら2人は大広間を探索する。すると、いきなりさっきルビィとサフィが見た幽霊が現れた。



 「そこか!」

 「覚悟して!」

2人は謎の幽霊に魔法を唱える。魔法は幽霊に当たったのか、そこが燃えていた。すると、幽霊はいきなり声を上げた。

 


 「なんなんですか! いきなり襲いかかってきて! ヒドいじゃ無いですか!」

 「あれ、モンスターじゃ無さそうですね……」

 「というか、喋れたんだな」

 「当たり前です! 私を何だと思ってるんですか!」

 「うちの可愛いメイドを脅した幽霊」

 「失礼な!」

 ショコラ達がある程度手加減したということもあるのか幽霊はそんなに傷ついていなかった。

ハルは不機嫌そうな幽霊に何かありそうだと思い、話を聞くことにしたのだ。

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