29.弟子と水晶と規格外

 2人の担当も決まり、ショコラとハルの元でリリィとマーシャも腕を上げていった。そして、修行後は2人は率先的に屋敷の手伝いをしていた。


 「……2人ともよく働くね」

 「だってこんな凄い魔女様に教わるんですから! このくらい当然のこと!」

 「2人ともあまり無理はしないでね」

 「はーい」

 「分かってますって」



 さて、10人に増えてより騒がしくなった夕食を終え、ハルは図書館で読書をしていた。そんな時、そこに意外な訪問者が訪れたのだ。



 「あれ、クロエじゃない。珍しいわね」

 「あ、あの……少し気になったことがあるのですが……」

 「どうしたの?」

 「魔女って誰にでもなれるものなのでしょうか……」

 「あれ、もしかして羨ましくなっちゃった?」

 「そうなんですよね……」

 クロエ曰く、ハルやショコラに教わる2人を見て羨ましくなったという事。自分も魔法を使ってみたいと思っていることを話した。



 「なるほどね。とりあえず明日ショコラさんと相談して、どうするか決めるわ」

 「本当ですか! ありがとうございます!」

ハルがそう言うとクロエは嬉しそうにパタパタと図書館から出ていった。



 さて、翌日3人に増えた弟子を見てショコラが言った。

 「クロエも習いたいって?」

 「どうやら羨ましくなったって」

 「ふーん……なるほどね」

 「ショコラさん?」

ショコラが考えるそぶりを見せたので少し訝しげになるクロエだが、ショコラはとあるものを取り出した。それは手のひらサイズの水晶だった。ショコラはクロエの前にそれを差し出した。



 「とりあえずこれにて乗せてみて」

 「は、はい分かりました……」

 ショコラに言われ、クロエはそっと水晶玉に手を乗せる。すると、水晶玉は光り出した。

しかし、その色は黒や白では無く、例えるならオーロラのように光り輝いていた。

この様子に驚く4人と反対にショコラは少し余裕ありげな表情だった。

光が収まり、クロエは困惑しながらショコラに聞いた。


 「ショコラさん……一体どういう事ですか?」

 「まぁ、要するにお前はどの魔法にも適性があるって事だな」

 「全ての魔法に適性!?」

 「おい、ハル説明してやれ」

 「何でですか……」

ショコラに言いつけられたハルは、ショコラを睨み付けてから、クロエに魔法の種類やその適性について教えた。クロエは自分がその者だと知って開いた口が塞がらない。そんな時、ショコラが言った。



 「そう言えば、何時ぞやお前がクロエの呪いを解いたとき、魔力を捧げたとかそういうのやったんじゃ無いか?」

 「何よ、私は呪いを解いただけでだって」

 「じゃあ、元からの才能か? 恐ろしいな……」

 何やらまた漫才らしき者を始めた2人に全く着いていけない3人はポカンとしていた。そんな弟子達に気づいたのかハルが説明した。



 「リリィとマーシャには昨日話したと思うけど、魔法は大雑把に2つに分けられるって言ったわよね。それはあくまで大雑把って事。細分化すると実用魔法や召喚魔法、そしてその上位互換も存在するの」

 「なるほど」

 「だから、魔女でも苦手な魔法とかはあるし、使えない魔法も当然あるわ」

 「現に私は浄化魔法は出来なくてな。調べたら適性は無かったようだ。あと昨日の時点でお前ら2人がどんな魔法を使えるのかこれで調べるべきだったな。ハルお前もだぞ」

と言うとショコラは2人の前に水晶玉を差し出した。リリィとマーシャは順番に手を水晶玉に乗せた。

 大方の予想通りリリィが乗せるとそれが白く光り、一方マーシャが乗せると黒く光った。



 「ハル、お前も乗せてみろ」

 「ええー……何で今更」

 「いいから」

ショコラにけしかけられ、ハルも乗せる。すると水晶玉はオーロラどころか金に輝いたのだ。あまりのことにショコラは口を開けたままになった。


 「いや、マジで……そんなことあるの?」

 「どうしました? ショコラさん」

 「黄金なんて見たこと無いからだよ! 全くお前は何者なんだ!?」

 「その黄金ってなんです!?」

 「端的に言うと、全ての魔法を使えるし、魔法を創れる存在だよ! 私以外で始めて見たわ!」

 「ショコラ師匠そんなお方だったのですか!?」

 「通りで色々規格外だと!」

 「ショコラさん凄い!」

ハルの隠れていた(はずの)才能に驚きを隠せない2人と興奮しだした弟子3人。その後、クロエは1日ずつ交代で面倒を見ていくことを決め、3人の魔女修行が始まったのだ。

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