20.大変だけど楽しい
さて、そこから2週間、ハルとショコラは育てる植物に合うための土作り及び畑製作に勤しみ、他の住居者は野菜作りのための知識を蓄えるためにそれに関する本を読んでいた。
「なぁ、ハル。にんじん用の土ってこれでいいか?」
「どれどれ……うん、成分的には間違いないね」
「お、そりゃ何より。でこれを何平方メートル分作ればいい?」
「どのくらい欲しいかはルビィとかに聞いてみないと」
「そうだな」
ショコラは台所にいるルビィの方へ駆け出し、ハルは作られた土に触り、確かめた。土の出来に満足するとそこにあったプランターに土を優しく入れた。
「レイラ、薬草の範囲はこのぐらいでいい?」
「そうですね、普通の薬草はそれなりに使いますからもう少し欲しいですね。まぁ、新しいポーションの研究もしてますし、その草も育てたいと思ってますのでその薬草もですかね……」
「ん、ところでその薬草についてこの本は?」
「こちらにあります」
「ありがと」
ハルは受け取ると早速その薬草についての知識を取り入れた。
「すみませーん、野菜の種ってありませんか?」
「お? どうした嬢ちゃん。種が欲しいのか?」
「はい、最近家庭菜園? とかいうものをやりたいと言い始めて」
「おー、丘のお嬢さん達もやり始めたか! いいよ何が欲しい? この時期なら、トマトとかをキュウリとかニンジンがオススメだよ」
「じゃあその3つをこの金貨分」
「はーい、毎度ありって多いな!」
「まぁ金は腐るほどあるからな、おっちゃんありがと!」
ショコラはリディルに来ていた。どうやらリディルでは今野菜を作ることがブームになっており、その種や苗を扱う店もあった。ショコラは町の人の噂話で、特に信頼の厚い店を選び、種を買った。
「さて、今日いよいよ種まきをするわけだけど、皆ちゃんと知識付けたかー?」
「はーい、バッチリです!」
「もっちろん! 任せてくれていいぜ!」
「何かあればお任せください」
「おう! 盛り上がってきたぞ!」
いつの間にか楽しそうなことを聞きつけたクレセとクロエも参加していた。全員いつものスカート姿では無く、動きやすい服装だ。その様子を見たハルとショコラは満足げに頷く。
「じゃあ早速種を植えていこうぜ、薬草組はあっちの研究所の方。野菜組はこっち側な」
「はーい」
ショコラの声で半々に別れる住民達。ショコラとハルもそこで別れ、各々の場所に向かった。
「ショコラ様、こんな感じでよろしいでしょうか」
「お、いい感じじゃん。後はこの上に優しく土をかぶせといて」
「はい」
「こちらもそろそろです。でも、その日に土と畑を作ったのに何でその日に種を植えようとしなかったのですか?」
「草原の土と野菜の用の土って色々違うだろ? それに肥料とかも必要だし、まぁ馴染ませるためにしばらくは植えなかったって事だな」
「なるほど、慧眼恐れ入ります」
「いーのいーの、そう言うもんじゃないって、クロエ、もうちょっと間隔広くなー」
「はーい」
ショコラが主導して種まきをしている野菜畑の方は至って順調だ。ショコラやセレネがルビィとクロエのサポートに回っていた。
「レイラ、この薬草はここだっけ?」
「そこでいいわよ。ところでこの畑、他のと違って底があるのね」
「本で調べると、その草は根がかなり伸びるってあったから。他の畑に侵入しても困るしね
」
「確かに、ってクレセ! あんたどこ植えてんのよ!」
「え? ここじゃ無いのか?」
「当たり前でしょ、全く……薬師と同居してたのに薬草に疎いんだから」
「レイラって薬草のことになるとプロだよね」
「普段はドジの塊ですけどね」
「ね」
「何か言った?」
「いえ何も」
一方、こちらはレイラが率いる薬草組。薬草を植える場所をクレセが間違えて叱責されており、普段とは違う様子にハルとサフィは小声で会話した。
「ふーっ、ようやく終わったな!」
「いやー……長かった……」
種まきをおえ、一同はまたさっきと同じ場所に集まる。メンバーは転がったり、座ったりと色々な反応をしていた。
「ところで、これからどうする?」
「どうするって?」
「水やりの当番とか雑草を抜くとかだよ」
「確かに、そう言う仕事もありますよね」
「まぁ、日にちごとに決めて、やるでいいか?」
「うんそれでいいよ。じゃあ、後でこれは決めるとして、いったん入りますか」
ハルのこの言葉を皮切りに皆次々と屋敷に入っていった。
「あー……疲れた」
「お疲れさん、つってもまだ始まったばかりだろ」
「そうなんだけどさ……」
「でも何か楽しみだよな、畑とか作ったこと無くて」
「それは私も一緒ですよ、まぁ楽しいのは確かですけどね」
ハルはお風呂に入り、ご飯を食べ諸々決めた後、図書館に来てショコラと話していた。
流石に疲労がたたったのか、机に突っ伏していたが、ショコラと話す内に具合がよくなったのか、顔は上向きになっていた。
しかし、2人はまだ知らない。この後またとんでもない騒動になることに……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます