嫌われ者の覚悟



「八峡さまッ」

「お待ちください、八峡さまッ!」


「………」


「先程の言葉は」

「お嬢様は錯乱しているだけなのです」

「それは本心じゃ―――」


「……なあ、界守さん」

「贄波家ってのは」

「そんなに偉いのか?」


「………えと、何の、話を」


「……あんなに強かったお嬢を」

「あんな風にさせる程に」

「自分ん所の血族を不幸にさせる事が」

「許容される程に凄いんか?」


「八峡、さま?」


「………はっ」

「あーあ、嫌われちまったなぁ」

「まあ、分かり切った事だけどよ」

「すんません、界守さん」

「俺じゃあ、お嬢を助けられないみたいっすわ」


「その様な筈は……」


「いや、まったく」

「お嬢の言う通りだ」

「俺は自分勝手だ」

「俺がお嬢を救えると勘違いしてた」

「其処まで大それた人間じゃねぇのは知ってたのに」

「あぁ、そうさ」

「クズは何処までもクズだ」

「変わる事は無い……」

「だから俺は」

「誰かの為じゃない」

「自分の為にやる」

「……多分」

「これからやる事は」

「お嬢の為じゃない」

「俺は、俺の為にやります」


「何を、なさる……おつもりで?」


「俺は―――」


「あれー、八峡くんじゃないですかー?」


「あ?」

「あ、なんだっけ、えぇと……」

「天秤さん」


「平平でーす」

「こんな所で一体何をしているんですかー?」


「あぁそうそう平平さん」

「いや、あんたこそ何してんすか?」


「私ですかー?私はですねー……」

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