禪域

 


「大体の基礎は詰め込めたね」

「おめでとう八峡くん」

「ようやく教授出来る領域に辿り着いた」


「か、はッ、ひぎッ」

「く、ふッ、あ、あぁッ」

「はっ……ふ、う」

「じゃ、じゃあ……」


「士柄武物の〈闊〉は言った通り」

「神胤を常に流し」

「士柄武物自体がキミを主だと認識させる」

「これが〈接続〉」

「士柄武物の方から流れ出す」

「力の使い方、その持ち主の願いが情報として流れ出す」

「これが〈同調〉」

「そして最終段階」

「生前の持ち主の意志を読み取り」

「士柄武物に何を託したかを読む」

「これが〈理解〉」

「この三つを通過した時」

「その時初めて士柄武物の〈闊〉が発動できる」

「これは実戦で経験を積み、熟練度を高めれば自然と出来る」

「任務や駕与丁雅から逃げる事を中心に士柄武物を開発するように」

「こうして私や照との訓練をする場合は」

「キミには禪域ぜんを覚えて貰う」


「ぜ、ん?」


「キミが扱う〈縮地〉」

「それは〈禪域〉と呼ばれる技術の極致だ」

「技術を極めたモノは、その努力と技量に応じて」

「一瞬だけ世界に通じる」

「世界は万能の辞書」

「人類が理解出来ない現象すら」

「世界は理解し保有をしている」

「禪域は技術を特化した時」

「世界と通じ、その技術の先を知り得る」

「走る、近づく、移動する」

「これらの技術を突き詰めると禪域に至る」

「其処から〈縮地〉と言う技能を理解する」

「通常の術式とは違い」

「禪域は他者に継承出来る」

「どれ程難しくても、それは技術だから」

「力が無くても、センスが無くても」

「時間と努力を掛ければ獲得出来る」

「それが、禪域」


「……はあ?」

「あぁ、そう、すか」

「………」


「理解出来てない様子だね」

「まあ、ようするに」

「強くなる為の技術を与える」


「……あぁ」

「そりゃ分り易いすわ」

「なら」

「教えて下さいよ」

「早く」

「強くなりてぇんすわ」

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