「ん………はぁ」

「良い湯ね……」

(少し柑橘の匂い)

(界守が趣向を凝らしてくれたのかしら)

「ふう………」

(………私の術式)

(屍子（しかばね）流（りゅう）傀儡（くぐつ）術式（じゅつしき）)

(禍憑を宿し、神胤を流す事で禍憑を実体化、〈ソノコ〉を生み出す)

(〈ソノコ〉は私を呪い、私はその呪いを神胤に変換)

(その神胤をソノコに流す事で〈ソノコ〉の能力を上昇させる)

(半永久機関となるこの術式は文字通り天井知らず)

(単純故に強力、攻略は難関とされる)

(……けれど、ソノコの元となる禍憑は今)

(私の中に宿っているけれど)

(私を呪っていない、ただ滞留している)

(蛇口が締められたままの状態)

(私が呼応しても反応しない……)

(やはりあの時)

(精神的なショックを受けたから……)

(それが原因で禍憑に異常が齎された……)

(………静月)

「………あ、ぁぁ」

「…………」

(……ダメよ、乗り越えないと)

(……静月は、もう、居ないの……)

(居ないんだから………)

「ぐ、う……ぐす………」

(乗り越え、ない、と………)

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