妹と出会う


「傘無かったのか?」


「は、っ……」

「ほら」


「……これ、は」

「受け取っても、良い、んですか?」


「当たり前だろうが」

「濡れたまま部屋に来いって言うか?」

「はぁ……服も濡れてるしよ」

「タオルで拭いて」

「上ェ上がって来い」

「風呂沸かしとくからよ」


『我が友ならば信頼出来る』

『ボクが戻るまでの間で良いから』

『頼むよ、我が友』


「……あぁ」

「そうだ、そういや」

「お前」

「名前なんだっけ?」


「永犬丸……」

「永犬丸………士織、です」


「そうか」

「俺ァ八峡だ」

「八峡義弥」

「お前の兄さんから」

「聞いてたか?」


「……はい、一応、は」


「そうか」

「じゃあ」

「拭いたら上がって来いよ」


「……わかりました」


(今んうちに)

(風呂でも沸かすか……)

「ん……?」

「うおッ」

「んだよ」

「もう体、拭いたのか?」


「はい……」


「そうか」

「はぁ……声くらいかけろよ」

「ビビるだろうが」


「……すいません」


「はぁ……えっと」

「今風呂沸かしてっから」

「……」

(部屋に上がらす……には少し)

(汚ねぇな)


「……まあいいや」

「服着替えるんだろうし」

「そのまま風呂場に行っとけよ」


「分かりました……」

「あ……」


「ん?」

「どうした?」


「あの、えっと」

「私……服が、濡れて」

「あ、セーラー服、じゃなくて……」

「替えの、服が……」


(確かあのバッグ)

(耐水性無さそうだったもんな)

(雨の日だってのに傘も差さず)

(あさがお寮まで歩いてきたんなら)

(そりゃ、バッグの中も濡れてるか)


「ほら」

「取り敢えずバスタオル」

「服は用意すっから」


【次回】

https://kakuyomu.jp/works/1177354055478314367/episodes/16816452218551016392

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