上に上がります。


「ご、ごめ、ぁい」

「許して…おね、げいぇぎゃあッ」


「許すわけないだろッ」

「お前は許されないッ」

「世間が、法律が、あの子が許してもッ」

「私は、許さない、許さないんだッ」

「ただじゃ殺してあげないからッ」

「苦しんで苦しんで苦しんで」

「其処で死ねッ!クズがッ!」


「……」

「先輩」

「殺すのなら手早くお願いします」


「……いや」

「ここから先は」

「殺すのは少し」

「難しくなります」

「こんばんわ……祓ヰ師」

「ご存じかも知れないが」

「ボクが、納所丈彦だ」


『ヂィネッエェエエェェェエ!!』


「ッ〈神亀じんき〉」


「……あら」

「ウチの〈ソノコ〉が失礼をしたわ」

「このままだけれど」

「御三家の一角、贄波家の次期当主」

「贄波璃々」

「以後、お見知りおきを」


「贄波さん」

「失礼だが」

「邪魔をしないで貰えると助かる」

「後少しで終わるんだ」

「それまで待っていてくれ」


「却下」

「待つつもりは無いわ」


「征きなさい」

「〈ソノコ〉」


「グギュウウウウウウッ!!」

「アギャァアアアアアッ!!」


「……強いね」

「一番硬度のある擬獣だよ」

「中々に強い」

「その歳で」

「よく成し得たものだよ」


「けど」

「こちらにも大儀はある」

「詰められるワケにはいかないんだ」

「だから……」

「〈赫猿あかざる〉」


(赤毛の……大猿?)


「インドの伝承」

「猿の手と言うものがある」

「それはある猿を使い」

「作られたものだ」

「実在する猿に」

「人の血を飲ませ続け」

「暴力によってストレスを与え続ける」

「そうすると猿は」

「赤い毛並みの猿になるのだと言う」

「それが〈赫猿〉」

「呪の猿なんだ」


「丁重なご説明」

「感謝するわ」

「けれど理解していて?」

「猿如きが」

「〈ソノコ〉に勝てるとでも?」


「ボクの見る限り」

「五分五分だと思うよ」

「自惚れじゃなければね」

「実在する猿の手から」

「作った物だ」

「指が折れれば」

「呪いが動き出す」


「ッ」


「赫猿の指は」

「呪詛の塊だ」

「指を折る事で」

「最悪なカタチで願いが叶う」

「多少の代償があるけど」

「相手に害を及ぼすには」

「これ以上ない力だよ」


「〈ソノコ〉」

「起きなさい」


「な」

「これは驚いた……」

「驚異的な再生力……」

「並みの怨霊じゃないね」


「彼女は」

「簡単に壊れるモノじゃないの」

「贄波家の術式を」

「舐めないで欲しいわ」


「二本目」


「食べなさい」


「オイ、ヂ、オイヂィ、ネェ!」


「で……」

(デタラメだ……)

(呪いそのものを吸収するなんて……)


「〈ソノコ〉」

「返してあげなさい」


「ヴィ、ォ」

「ヴォ、エ、エェエエエエエ!!」


「くッ」

(衝撃で、下陰がッ!)


(エレベーター付近ッ)

(ッなにか、来るッ)


「うおッ」

「なんだコイツっ!?」



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