薄ら嘘


「よぉ」

「お嬢様」

「仕事の依頼か?」


「ちょっと」

「貴方にお嬢様なんて」

「呼ばれる筋合いなんて」

「無いのだけれど」


「あ?」

「ブルジョワなんだろ?」

「お嬢様じゃん」


「なによ」

「出会い頭に」

「失礼じゃないかしら?」


「……あー、そうだな」

「分かった」

「じゃあお嬢」

「仕事の依頼か?」


「様を取れと言ったワケじゃないのだけど」


「お嬢も任務か?」


「話聞いてるのかしら?」

「……まあ、そうね」

「任務、受ける最中よ」


「あーやっぱし」

「俺も何だわ」

「職員室、行こうぜ?」


「なんであなたが仕切るのよ」

「……というか」

「貴方、病み上がりでしょうに」

「そう動いて大丈夫なのかしら?」


「あ?なんだよお嬢」

「俺が入院してたの」

「知ってたのかよ」


「……いいえ、知らないけれど」


「あ?」

「さっき病み上がりって……」


「いいえ」

「知らないわ」

「私嘘なんて吐いた事無いもの」


「……そうか?」

「けど……なんかなぁ」


「何よ」

「歯切れが悪い人ね」


「いや」

「お嬢の声、どっかで聞いた事あるんだよな」

「なんか、励ましてくれた様な声に似てて」


「私じゃないのだけれど!!」


「お嬢に似てるって言っただけだろうが」

「つかその反応、お嬢やっぱ」


「はっ!知らないわ!」

「貴方の所にお見舞いなんて」


「行ったのか?」


「行ってなんか居ないわっ!」

「もう、良いから行くわよ」


「おい話すり替えんなよ」


「うるっさいわねぇ!」

「知らないと言ってるのだから」

「知らないで通しさないな!!」


「うわ、凄ェ必死……」

「分かったよ、お嬢は見舞いに来てない」

「そんで言葉なんて投げ掛けて無い」

「これで良いんだろ?」


「えぇそうよ」

「まったく、人騒がせな」


「いやそれはお嬢だろ……」

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