変態メイドは今日も平常運転


「ふふ」

「お嬢様」

「まるで」

「通い妻の様ですね」


「……ねえ」

「さっき」

「何て言ったのかしら?」

「ねえ?」

「答えてくれる?」

「良く」

「聞こえなかったの」


「私が言った言葉ですか」

「確か……」

「まるで肉棒を欲する肉便き――」


「言って無いでしょ」


「……先程申した言葉は」

「確か、この様な……」


「そんなワケ無いでしょうに」

「記憶力の問題かしら?」


「あ、申し訳ありません」

「どうやら私」

「言い間違えてしまった様です」


「でしょうね」

「もしあの卑猥な言葉を」

「本気で言ったのなら」

「引っ叩いた所よ」


「ペニスを欲するビッ―――」


「引っ叩いて良いかしら?」


「どうぞお嬢様」

「この白き肌に」

「赤き紅葉をお作り下さい」


「………」

「……えいっ」


「んあっ」

「んん、流石お嬢様」

「良いスパンキングです」


「………はぁ」

「……さっさと服を着なさい」


「え?服を脱ぎなさい?」


「鼓膜を取り換えなさい」

「良い?」

「貴方は通い妻と言ったの」

「分かるかしら?」


「はい」

「確かにそう仰いました」



「……怒る気も失せたけれど」

「決して、勘違いしないで頂戴」



「私は」

「あの男に」

「文句を言う為に」

「様子を見ているの」

「決してあの男に」

「恋愛感情なんて抱いてないわ」

「つまりは」

「見当違いなの」


「そうでしたか」

「それは失礼しました」


「それではお嬢様」

「殿方のお見舞いに」

「行かれるのですか?」


「だから」

「お見舞いなんかじゃないわ」

「私が毎週」

「あの男の元に行くのは」

「生きているかどうか」

「確認する為なの」

「分かるかしら?」


「そうで御座いましたか」

「それでは仕方がありませんね」


「じゃあ」

「車を用意しなさい」



「承知致しました」

「お嬢様」


「………これで」

「良いかしら?」


(……あれで)

(恋愛感情は無い、ですか)



(お相手は)

(意識が戻らぬ生きた屍)

(ならば)

(身嗜みなど無意味でしょうに)



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