第35話 レイモンド伯の憂鬱

 夜が明け、婚姻の祝宴2日目が始まる。


横では妻になったキンドリーが、スースーと寝息を漏らしながら眠っている。


「ハー」


目覚めて自然に出た ため息が気持ちを陰湿なものにする。


これから毎朝 こんな感情になるのは、流石にキツイ……


オクク男爵の巨万の富を生み出す鉱山を手に入れる為とはいえ、まるで好みでないロリっ娘キンドリーとの婚姻は無いわ~~~!!


俺は豊満なタイプの女性が好きなのに、もし オクク男爵が天涯孤独で無く、妹でもいれば、それはもう圧倒的なボリュームの女性だっただろう。 そんな女性と婚姻したかった、そうすればその妹と婚姻してオクク男爵に事故死してもらい鉱山を手に入れ、妻となったオクク男爵の妹と愛を育む生活もできたのに。


ああ、圧倒的ボリューム 我が身を余すところ無く包み込むお肉~~~!!


ちらりと横を見るとキンドリーは まだ スースーと寝息を立てていた。


「ハー」


これでも、キンドリーが異能を保持していれば生まれてくる子供に期待が持てたが。




 異能持ち同士の子供なら、かなり高い確率で異能を持った子供が生まれる。


婚姻の祝宴の初日が終わり、二人きりになった所でキンドリーに聞いた。


「キンドリー、私達は婚姻も終えて晴れて夫婦となった、そこで教えて欲しい君の異能を」


もちろん貴族の子弟ならほぼ異能を持っている、いや 持っていなければ家を追放され家名を名乗る事を許されないので、全ての貴族指定が持っているといえる。


「異能ですか…………たしか持ってなかったと。」


平然とした顔でキンドリーは答えた。


「はっ? 持ってないと聞こえたが?」


「はい、待ってません」


また、平然とした顔で答えた。


 そういえば、キンドリーは5歳でオクク男爵と婚約したのだったな、平民から男爵になったばかりのオククと、まだ5歳のキンドリーの婚約、たしかにおかしい話だ。


5歳で婚約は無いことも無いが、余程の事が無いと発生しない、基本貴族の親なら出来るだけ良い条件の貴族に嫁がせるために娘が産れるとせっせと好条件の嫁ぎ先を得る為に活動する、何とか妥協できるのが10歳を超えてあせりだしてからの婚約が通常だ。


そして、平民から男爵なったばかりのオクク男爵、たしか男爵を授けられたのは今回奪い取った鉱山の開発に成功した褒美に与えられたはず、まだ どれ程の希少鉱物が産出されるかわからず王国の貴族達は対応に困ったそうだ、しかし 昔から友誼のあったキャンベル公爵が派閥に向かえ安定した位置を得たと聞いている。


キャンベル公爵の派閥には、キンドリーの親のモウゲ伯がおり、その縁で婚約したはずだが……


まだ、どれ程の財を鉱山から得られか分からない平民上がりのオクク男爵を、伯爵家の次女とはいえ5歳のキンドリーと婚約させた理由は、異能を持っていない娘を何とか貴族の夫人とする為か。


糞!!


 今 思い出した。 モウゲ伯といえば、こんな話を聞いたことが有った、娘のキンドリーの婚約者のオクク男爵から無理やり娘の為と援助させ、その金を貴族社会に還流させるのではなく家族の為に使っていると、家族愛を大切にし家庭円満な幸福な家族を作る家庭主義の唾棄すべき貴族だと。


ああ、だから年間50憶エリンなどとバカげた金額をオクク男爵からむしり取っていたのか、昨日の婚約の祭典後は私になったが……










 






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