第32話 モウゲ伯令嬢キンドリー 3

 二人を照らすスポットライト、そして優美な音楽が流れだす。


二人は、まるで歌劇の登場人物のように踊りだす。


周りは、それが当然のように二人の為にスペースを開けスポットライトから遠ざかり闇の中に、心の中の笑いを堪えて。



二人は踊りを終え、まるで流かのように二人っきりになれるバルコーに。


「ああ、レイモンド伯さま、私には婚約者がいますと言ったのに……」


熱い瞳で、レイモンド伯を見つめるキンドリー。


「すいません、あなたの妖艶な魅力に自分を抑えられず」


舞踊会のファーストダンス、主催者のレイモンド伯が未婚、未婚約者、自らの婚約者と踊るのなら何の問題もないだろう、しかし 婚約者の有るキンドリーと踊ったなら問題となる。


「わたしは、どうしたら……」


「それでしたら、大丈夫です。 この舞踏会はキャンベル公爵派閥の未婚約者の子弟を中心に私の友人、知人を集めたもの あなたにご迷惑かける事は無いでしょう、もし 何か有りましたら、私の無理やりだった事にされて、私の責任にしていただければ」


レイモンド伯は跪き、キンドリーの手を取り、その手に頬を添えた。


「そんな、レイモンド伯だけの責任になんて、私も同罪です、どうか私にも罪をおわけください」


キンドリーは話続けるが心ここにあらず、目が虚ろになり上気しているのが一目でわかる状態となっていた、そうまるで空想の中で御伽話のヒロインになりきっているかのように。


「どうか私の罪を背負うなどと悲しい事をいわないでください、この罪は私が背負ってこそ あなたへの愛の証明となる罪なのに」


「いえ、愛の証明となる罪ならば、なおさら私にも 私にも罪をお分けください」


レイモンド伯は立ち上がり二人の両手が重なり、そして二人はになる。


ひとつになったまま、レイモンド伯は言う


「皆 同じキャンベル公爵派閥の友人、今宵の事は外にすぐ漏れる事はありません、これでも私は伯爵家当主、婚約者の方には後日私から真実の愛を語り分かっていただこうと思います」


「いえ、私の婚約者は皆さまと同じキャンベル公爵派閥のオクク男爵です、この舞踏会の中にも繋がりの有る方は大勢いらしゃると思いますので、すぐに伝わるかと」


ちょと、素にもどったキンドリーは即答した。


 しかし、ひとつから二つに分かれ2回転したレイモンド伯は語る


「ああ、あの高名なオクク男爵が婚約者とは!!」


崩れ落ちる、レイモンド伯


駆け寄るキンドリー


「レイモンド伯さま~~!!」


速攻、ヒロインに戻る キンドリー


「あのオクク男爵だったとは、それならば…… それならば、もしかしてうまくいくかもしれません、この舞踏会に居る者達は、平民上がりのオクク男爵を良く思っていません、キャンベル公爵の親友などと公言し権勢を派閥ないでふるっております、そして その裏で自らの領地では重税で民を苦しめ、王都ではいたいけな幼女にいかがわしい行為をおこなっていると」


「まあ、オクク男爵は、あの豚は そんな お方だったのですか」


キンドリーは驚愕の表情で、オククを豚と呼んだ。


「すぐに、証拠を集め 申し開きも出来ない所で発表し婚約破棄を!!私の幸せの為に」


「はい、もちろんです私達の幸せの為に」





「Guilty」 「Guilty」 「Guilty」




舞踏会は、バルコーに行われている三文芝居をよそに進み閉会となった。


「さて、この情報どこに売るかな」


「ああ、しかしキャンベル公爵には報告した後にしとかないとな」


「あの二人はわかってないのかな、貴族の世界に秘密など無いことを」


「秘密とは、知っていて知らない事にして政治、駆け引きする事なのにな」


「お花畑の二人の未来に祝福を、だな」


王国の真の秘密を知らない貴族の子弟達は高笑いをしつつ王都に散っていった。





 レイモンド伯家では、舞踏会の後かたずけに追われていた。


「はい、今日はご苦労様でした」


レイモンド伯家の執事は。3万エリンを代表の者にわたす。


本日の舞踏会で、見えない所から音楽を流していた楽団のリーダーにだ。


「毎度、ありごとうございます」


30体の楽団ゴスロリゴーレムちゃん達は、楽器をかたずけレイモンド伯家を後にする。


 「Guilty」 「Guilty」 「Guilty」


ゴスロリゴーレムちゃん達の呟きは、誰にも聞かれる事無く ただ闇に吸い込まれていった。



 レイモンド伯とキンドリーの純愛は、唯一人 オクク男爵のみが知らない秘密となった。


 




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