第8話 奪いし者の野望

 キンドリー令嬢を奪ったレイモンド伯は同年代の若い貴族の子弟を集め祝宴を開いていた。


「くく、あの夜会は楽しかったね~、あの成金 オクク男爵が泣きながら逃走 まさに建国からの王国貴族の高貴な血筋の復権を示せたかな」


 ここに集っているのは、彼も所属するキャンベル公爵派閥の若い貴族達だ、王国では8家の公爵家が各自派閥を持って王国の政治に介入している、その中でキャンベル公爵家は今代の国王の弟で、強い異能を持つことから、新たに8個目の公爵家として作られた家門だ、その派閥は老害が少ないためか若い貴族が多数集まり在籍している。


 「まさに、まさに!! あの成り上がりに鉄槌を下したレイモンド伯はまさに今代英雄でございます!!」


 オクク男爵に鉄槌を下すことにより、幾人かの若い貴族が彼の元に集まりだしていた。


 「そうです、あのような下賤な平民の血筋が下級とはいえ、貴族となり国政に口を出してくるなど、建国からの貴族の尊い血筋を愚弄する行い」


 オクク男爵のように、平民上がりの貴族に対して若い貴族達は不満を持ち出している。


 「しかし、泣きながら、お腹の脂肪を振り振り逃げ出すさまは まさに お笑い 道化のごとき姿、これは王国の歴史に残すべきですな、本当に下賤な成金貴族は金儲けはうまくても貴族の矜持を持っておりませんな」


 何故か、平民上がりの貴族、官僚は金を持っているし、重要な仕事が彼らに回されるようになってきている。


 「わはっは~~!! そうだ そうだ 本当に最近の王国はどうかしている 平民上がりの下級貴族共が、国政の中枢に入り込み 陛下を篭絡して思いのまま政治を行い 建国からの上級貴族をないがしろにしている!!」


 テェルレイン国王が戴冠し王国の政治は少しづつ変わり始めた、現在 宰相をはじめ大臣の半数が下級貴族が占めている、今までは上級貴族の家系で順番でまわしていた役職をだ…………役職を失うだけならまだしも、


それによってもたらされていた各種利権もが奪われたのだ。


 領地からの税収は、どんどん減っている上級貴族が大半だ…………しかし、上級貴族の主な収入は王国の政治からの利権なのだから。




 食料、塩、砂糖、香辛料など、他国からの輸入品、王国で産出される宝石、貴金属の輸出になどの商会や他国との間に入る事により手に入る莫大な利益、これを派閥を通じてこの利権を奪い合っていたのだが、この貴族の特権を平民上がりの貴族達が奪うのでは無く、間に貴族が入って話を纏める事自体を無くしだしたのだ、この収入源を失うと上級貴族の華麗なる生活が成り立たなくなる。 




 しかし、王国にて最大の資産家にして金満家のオクク男爵を潰した、その資産を生む鉱山を手に入れたのだ…………いや、まだだキンドリーの名義だ しかし、すぐに私の名義の所領になるだろう…………早く、婚姻を終わらせて金を産む鉱山を我がレイモンド伯家の名義に…………




 「さあ、今宵は大いに飲んで楽しんで、我らの栄光の未来を語らい合おう~~!!」



 鉱山を手に入れるためにキンドリーを誑し込んで、策を実行させたのだ。オクク男爵を失墜させ鉱山を奪い取り、そこから産み出される資金、利権をもってキャンベル公爵派閥の実権を握り、いずれはこの国の実権をも手に入れてみせよう。







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