第49話 食い散らかし

 リディに拾わせた八本の指は、回復魔法中でなんとか、くっついた。でも、くっきりと傷痕が残ったな。リディはまだ回復魔法大は習得していない。


「俺の指全部、その小さい体で運ぶの大変だったろ?」


「なぁリディ」と言って俺は彼女の唇に指を、ふいに押しつけてやった。なんだ、もうそんなに嫌そうな顔しないじゃん。俺は頬を近づけて口パクで愛してる。なんて言ってやった。


 おっと、これは自分でやってて自分が恥ずかしいな。彼女が話すことができたらどんな声音こわねなんだろう。




 リディは俺のさっきくっついたばかりの指を、両手で抱えるようにでてくれた。俺のこと分かってくれるのはお前だけだな。でも、復讐は続けるから。




「さ、見えてきたな。ユスファン国。あいつら、俺のこと絶対待ってるだろうな。俺が処刑されてからすぐに、町にいた俺の好きな女の子食ってくれてるしな」




 俺が処刑されてすぐに復活したとき、ユスファン国にも寄った。人恋しくて見に行くと、町は壊滅していた。


 ディルガン国の奴らの依頼によるヴァネッサ、ヴァレリー、ペアのドラゴンによる放火とまた別の事案だってすぐに分かった。


 肉片が散乱していた。歯型の残った肉片。しゃぶられて投げ捨てられた骨。




 でも、獣の仕業ではない。鋭利な刃物による肉の切除の痕と、鈍器による頭部破壊。




 グールの仕業だ。俺は火あぶりのときに確かに垣間見ている。あのグールの親子。母親で魔導士ラグンヒル、その娘で双子の姉ノラと、妹のイーダ。




「あいつら、元パーティーってわけでもないんだけどな。でも、あのエリク王子が拷問したときに口走ってくれたもんな。言わなくてもいいのに、あいつらの居場所吐いたもんな」




 俺は笑顔を抑えることができない。まぁ、犠牲者は多い方が盛り上がるだろう。だって、あいつらは俺の心臓ばかりを狙ってくるからな。寝込み。食後、もちろん、食事中も。


 でも、仲間が集まった旅の後半だったからさ、ヴァネッサの拘束魔法やら、マルセルのビンタやら、ヴァレリーを身代わりにしたりして、俺の心臓にはナイフ一本届かなかったな。




 実際グールを仲間にして魔王討伐も楽しかったかもしれない。でもなあ、やっぱ町娘に手を出したらいけないよな。俺の女だぞ? しかも、食い散らかしてくれてたし。




 さて、あいつらにどうやって思い知らせてやろうか。俺を処刑場まで見に来てあざ笑った罪は重いぞ。



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