わたしは自分の感情が嫌いだ。

作者 永都佐和

感情ごった煮の《トマト煮込みたらこスパゲッティ》を召しあがれ

  • ★★★ Excellent!!!

享年十八歳。わたしは彼に殺された。
それを死ぬには遅すぎる年齢だったと綴るところから、この小説は幕をあげる。

才能。それは凶器だ。
努力。それは鈍器だ。

恵まれた幼馴染はそれらの武器をかき集めて、「わたし」を殺した。殺意なく、悪意なく。――罪なく。その後にはただ、殺された「わたし」というものだけが残った。

昔なにかに載っていた言葉に「天才とは積み重ねてきた努力がすべて報われるひとのことをいう」というものがありました。
つまり凡人とは努力をしても報われないひとのことをいうわけです。
当時のわたしは衝撃を受け、呻りました。いま、その言葉が頭の裏側にまざまざとよみがえってきています。
けれどもそれだけじゃない。この小説は怨憎がこもったものじゃなくて、もっと柔らかい、悲喜こもごもな感情の坩堝なんです。どろどろではなく、トロトロです。それはさながら、トマト煮込みたらこスパゲッティハンバーグカレーみたいな。妬みと諦めと、憎しみと……恋情と。絡まりもつれた生々しい感情が、著者様特有の柔らかな筆致で書きあげられています。

笑えそうで笑えなくて、やっぱりくすりと息が洩れてしまう――すごい、短編小説です。是非ともご賞味あれ!

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