わたしは自分の感情が嫌いだ。

作者 永都佐和

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★★★ Excellent!!!

享年十八歳。わたしは彼に殺された。
それを死ぬには遅すぎる年齢だったと綴るところから、この小説は幕をあげる。

才能。それは凶器だ。
努力。それは鈍器だ。

恵まれた幼馴染はそれらの武器をかき集めて、「わたし」を殺した。殺意なく、悪意なく。――罪なく。その後にはただ、殺された「わたし」というものだけが残った。

昔なにかに載っていた言葉に「天才とは積み重ねてきた努力がすべて報われるひとのことをいう」というものがありました。
つまり凡人とは努力をしても報われないひとのことをいうわけです。
当時のわたしは衝撃を受け、呻りました。いま、その言葉が頭の裏側にまざまざとよみがえってきています。
けれどもそれだけじゃない。この小説は怨憎がこもったものじゃなくて、もっと柔らかい、悲喜こもごもな感情の坩堝なんです。どろどろではなく、トロトロです。それはさながら、トマト煮込みたらこスパゲッティハンバーグカレーみたいな。妬みと諦めと、憎しみと……恋情と。絡まりもつれた生々しい感情が、著者様特有の柔らかな筆致で書きあげられています。

笑えそうで笑えなくて、やっぱりくすりと息が洩れてしまう――すごい、短編小説です。是非ともご賞味あれ!

★★★ Excellent!!!

——その、シューベルトの「ピアノ・ソナタ第二十一番変ロ長調」が響いたときに、わたしは、彼に殺された。享年、十八歳。死ぬのが、遅過ぎたかもしれない。

冒頭のこの一文に心臓が居抜かれました。
インパクトとミステリが同時に発生して、「どういうこと?」と先を読む牽引力になりました。

その先に見たのは、ブルーマウンテン、ピアノ、トマト煮込みたらこスパゲッティ……。

多くの人が一度は抱いたことがあるだろう、妬み嫉み。
それを書ききった作品だと思いました。ただ、それが嫌な思いのまま終わったりはしないので安心して主人公に共感して読んで頂きたいです。

★★★ Excellent!!!

衝撃的な、心を抉るような主人公の独白から始まるお話。
文字どおり血を滲ませながら努力したピアノは、どうしてもあの人にかなうはずもなく…。

主人公・冬弓の思い出と、あるマダムが関わる名ピアニストたちの思い出、クラシックなピアノ曲が物語を彩ります。
最後まで読むと、どんでん返しかも?
キツめの言葉とお笑いとのギャップはこの作者の持ち味だと思います。
ちょっとクセになりますよ♬

★★★ Excellent!!!

衝撃的な一文から始まる本作品。
才能はいつだって、人々を惑わし、その人生を変えてきました。向き合わないといけないものなのでしょうがないですが。

その重いテーマが書かれていますが、登場するキャラクターたちのおかげで、スラスラ読めます。

二人のイチャイチャには恨みを通り越して微笑ましさすら感じました。