第179話 風呂上がりの楽しみ
お風呂から上がると、柔らかいタオルで体を拭いてから冷たい水をグイッと飲む。
風呂上がりの水は本当に最高だなぁ……牛乳やコーヒー牛乳なんかが銭湯とかでは定番のイメージがあったので試してみたけど、俺は冷たい水の方が美味しいので自然とそちらを選んでいた。
ジュースやお茶とかもいいんだけど、やっぱり原点にして頂点は冷えた水だと俺は思った。
「エルー、髪乾かしてー」
「分かりました」
水を飲んで余韻に浸っていると、フレデリカ姉様からお声がかかるので手早く魔法で髪を乾かす。
相変わらず綺麗な黒髪だけど、母様やレフィーア姉様、リリアンヌ姉様がロングなのに対して、フレデリカ姉様はショートの髪型が多かったりする。
よく動くフレデリカ姉様からしたら、長くするメリットもないからそうなるのだろうけど、どんな髪型でも似合うのは流石だと思う。
「エル、私もお願いね」
「勿論です」
フレデリカ姉様の髪を手早く乾かすと、母様からもお声がかかるので、フレデリカ姉様のために冷たいコーヒー牛乳を用意してから母様の髪の毛を乾かすために魔法を使う。
「あら?昔よりも手馴れてるわね」
「婚約者達にもしてますからね」
一緒にお風呂はまだ先ではあるけど、風呂上がりに髪の毛を乾かしてあげたり、髪を結ったりなんかは割と頻繁にしていたので、母様や姉様たちと住んでた頃の経験をそのまま活かせていると思う。
「そういえば、こっちに住んでた頃はアイリスちゃんにもしてあげてたわね。レイナちゃんやセリィちゃんの髪はどう?」
「相変わらず綺麗ですよ」
アイリスの水色の髪も、レイナの金色の髪も、セリィのライトグレーの髪も三者三様で見ていて凄く楽しい。
「エルー!お代わり!」
「少々お待ちを」
用意しておいたコーヒー牛乳を飲み干したフレデリカ姉様からお声がかかって、すぐに用意するけど、そろそろかき氷を要求されそうなので手早くそれも用意していると、母様が微笑ましそうに言った。
「エルはフレデリカの事が良く分かってるわね」
「姉弟ですからね」
「そうね、昔から仲良しだったものね。エルが小さい時はフレデリカが積極的にお世話してたけど、気がついたらエルがフレデリカのお世話をしてるようになってたのよね」
母様からはそう見えていたらしい。
確かに、こういった些細な事は俺が多少お手伝いする事もあるけど、実際はフレデリカ姉様にはお世話になりっぱなしなので俺としてはお世話をしているという感覚は無かった。
「母様は紅茶でしたね」
「ええ、ありがとう」
冷たい紅茶も用意してあったので、母様のためにカップに注いでから渡すと優雅に口をつける母様。
流石は王妃様というか、気品が溢れており実に綺麗だったけど、義姉のアマリリス義姉様もそのうち並びたちそうなので恐ろしい所。
流石は帝国の皇女様というべきなのか、何にしても父様や母様の跡を、マルクス兄様とアマリリス義姉様が継ぐのなら俺としては安心出来るので陰ながらサポートくらいはさせて貰おう。
あ、そういえば……
「姉様、ダンテ義兄様は今日はお帰りになりますか?」
「んー、明日になるって言ってたかしら?」
「じゃあ、ダンテ義兄様の分もケーキをお土産に買ってきたので、帰ってきたら渡しておいて頂けますか?」
「分かったけど……普通のケーキ?」
「いえ、アイスクリームケーキですよ」
アイスという贅沢品を更にケーキへと加工する業の深い所業だけど、美味しいものは美味しいので仕方ない。
俺のその言葉にフレデリカ姉様と母様が嬉しそうにしていたので、冷凍庫に入っていると告げると身支度を整えてから颯爽と立ち去っていく二人。
甘いものが好きな女性が多いのはやはり本当なのだろうと、思いながらそれを見送ってから、もう一杯冷たい水を飲んで今度こそ余韻に浸ることにする。
風呂上がりで温まっているからこそ、冷たい水が喉を通るだけで凄まじい程に爽快感があった。
飲みすぎるとお腹を壊すけど、やはり冷たい水は最高だと俺は思う。
無論、常温でも美味しいけど、風呂上がり、冷えた水というこの二つの要素だけで倍は美味しくなるのだからやはり風呂上がりはこれに限るとさえ言えた。
にしても、今日一頑張ったかもしれないなぁ……フレデリカ姉様との稽古よりも頑張ったと思うけど、何にしても二人の興味がアイスクリームケーキに向かったので俺はのんびりした時間を過ごせる。
さっき、俺を見捨てたトールはどうせまだ訓練場に居るだろうし、とりあえずはそちらにでも戻ろうかと俺も身支度を整えてからお風呂場を後にする。
しかし、お風呂というのは本当に素晴らしいねぇ。
体を綺麗に出来て、尚且つお水が美味しくなるのだから、前世の夢が全て叶ったような気さえしてくるよ。
願わくば、次は結婚後にアイリスやレイナ、セリィと混浴が叶いますようにと思いつつ、もう少し屋敷のお風呂をグレードアップする計画を密かに考えてもみるけど、温泉地を探すことのももう少し本格的にやるべきかもしれないとも思った。
忙しいけど、そのくらいの時間は作れるだろうし頑張るとしようかな。
そうしてやる気を出しつつグラスの三分の一くらいの量の水を取り出して締めとして飲むけど、この贅沢が堪らないと俺はいつも通り感動しつつも気持ちを切り替えるのであった。
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