第177話 母様も参加
「あら、フレデリカ。エルも居るわね」
困惑している俺をフレデリカ姉様はお風呂に引っ張ていくけど、その途中で母様と遭遇する。
「その様子だと、久しぶりに稽古してたのね。エルは訛ってなかった?」
「ええ、大丈夫だったわよ」
「そう、久しぶりに楽しめたようで良かったわね」
微笑ましそうにフレデリカ姉様を見る母様。
「これからお風呂かしら?なら、私も一緒に行くわ」
仲良し母娘の様子にほのぼのしていると、俺たちの様子から察したように母様は続けてそんなことを言う。
姉とのお風呂が、姉と母とのお風呂にジョブチェンジしました。
この歳で姉と母とお風呂に入る俺は肉体年齢的に考えてもアウトな気がするの俺だけだろうか?
「アマリリスも誘ってこようかしら?」
更に追加で義姉を追加しようとする母様。
義姉とはいえ、流石にそれは……
「アマリリスなら、マルクス兄さんとお忍びデートよ」
「あら、ラブラブね」
マルクス兄様……貴方はどこまでも弟を助けてくれる良き兄なのですね、尊敬してます。
更なる追加を免れて一安心しつつも、依然として俺のピンチは続いている。
とりあえず時間稼ぎでもしてみましょうか。
「飛行船の運行で賑やかになってますから、きっと楽しいお忍びデートになってますね。騎士たちもフレデリカ姉様達のお陰で凄く強くなってますし安心です」
「そうね、頼れる護衛も居るしマルクスも強いから心配ないのは幸いね。フレデリカもたまには稽古の無い日にダンテと出掛けたらどう?」
その言葉にフレデリカ姉様は「うーん」と唸ってから答える。
「私もダンテも買い食いはいつもしてるし、目新しさがないのよね」
「そういえば、貴女とエルは気がつくとよく外にお忍びに行ってたわね。エルはアイリスちゃんとトールくん連れだったけど、向こうに住むようになってからも、アイリスちゃんとはこっちでもちょくちょくデートしてるようね」
何処で知ったのか俺とアイリスのデートを知ってる様子の母様。
まあ、お忍びデートとか言いつつも全然忍べてないからだろうけど。
「あー、そういえば前に見かけた事あるわね」
「そうなんですか?」
その割にはフレデリカ姉様に声を掛けられた記憶が無いのだけど……もしかして気を使ってくれたのかな?
「話しかけようとしたら、ダンテに止められたのよ。『デート中だから邪魔しちゃダメ』だって言われたから声はかけなかったけど、楽しそうだったわね」
流石はダンテ義兄様。
俺とアイリスに気を使いつつも、フレデリカ姉様を上手くエスコートする手腕は流石だと思う。
「ふふ、エルは昔からアイリスちゃんが好きだったものね。レイナちゃんとセリィちゃんも同じくらい愛してるようだけど、拾ってきてからの微笑ましいやり取りはよく覚えてるわ」
「確かに、トールとも仲良しだったけど、アイリスは昔からエルを慕ってたわね」
秘めていた気持ちが伝わってるこの温い感じは何なのだろうか?
母様は知ってても驚かないけど、フレデリカ姉様にもバレていたとは思わなかった。
女性はその辺に聡いので当然なのかもしれないけど、それだけ俺とアイリスはじれじれした様子だったのだろうか?
「そういえば、もう一人婚約者が増えたって本当なのかしら?」
「え?そうなの?」
「いえ、増えてませんよ。ただ、向こうで友達のご令嬢が出来ましたが」
アイーシャの事まで伝わってるとは、知りすぎな気もするけど、情報源は一体……?
いや、詮索してもいい事ないか。
何にしても、疚しい気持ちはないしここはキッパリと今の関係を伝えるべきだろうと、アイーシャについて説明すると、母様とフレデリカ姉様は顔を見合わせてから言った。
「新しい婚約者候補に聞こえるのは気のせいかしら?」
「大丈夫よ、私にもそのビジョンが見えたから」
邪推な気もするけど、アイーシャとは気が合う上に割と好みなので否定するのはなんかあれでどもってしまう。
「何にしても、そのうち連れてきなさい。興味があるわ」
「そうね、楽しみにしてるわよ、エル」
そう言いながらも、止めていた足を動かし始める二人。
時間稼ぎはここまでのようなので、フレデリカ姉様に引っ張られてそのまま俺も続いていく。
話をして時間稼ぎをしようなんて姑息な真似では、このイベントが過ぎることはなさそうなので、ここは可愛い弟として甘んじて受け入れるべきだと諦めることにする。
この歳で一緒にお風呂というのはかなり気が進まないけど、末っ子であり、弟の俺には姉や母からの愛でられる義務もあるので仕方ない。
とはいえ、もう少し普通に可愛がってくれるだけでいいんだけど……まあ、前世のことを考えると破格の愛なので拒否もできない。
これが最後の二人との入浴だと割り切って歩みを進めるけど……それにしてももう少し恥じらいとかあってもいいのでは?と思う俺は変だろうか?
多分答えは否であってると思うけど、母様やフレデリカ姉様はその辺は一応分かっているし、俺が二人の裸に何も思わないように二人も何も思わないと相互理解があるからこそなのだろうけど、とりあえず俺に息子や娘が出来たら、その辺はちゃんとしようと心に決めておく。
まあ、アイリスやレイナ、セリィ達との入浴は凄く楽しみだけどね。
俺も一応、男の子だからその辺は……ねぇ。
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