第169話 お土産タイム

婚約者達で癒されていると、ふと、アイーシャの視線を感じる。


さり気なく婚約者達に混じっていたので気にしてなかったが、アイーシャの視線から俺はその意図……というか、忘れていたことを教えてくれたことに感謝しつつ切り出すことにした。


「そうそう、皆にお土産を買ってきたんだけど……受け取ってくれるかな?」


デートというか、アクセル義兄様のエスコートの際、空いていた時間にアイーシャとも色々見て回っていたのだが、その時に、アイーシャに似合いそうな小物をプレゼントしたりした。


その際に、不平等がないように婚約者全員にお土産を買ってきたのだが、まあ、お土産自体はこれまでも何度も渡しているのでそれ程おかしなものでもない。


お土産の種類は多岐にわたるが、食べ物が一番喜ばれるのでそちらが多かったりするが、無論乙女心をそれなりには理解しようとしている俺としても、婚約者達に似合いそうなアクセサリーなんかも選んだりはする。


そして、今回はアイーシャに買ったようにそれぞれに似合いそうな小物を選んでみたのだが、はてさてどうだろうか。


「お土産ですか?ありがとうございます!」

「……主、食べ物?」


実に理想的な反応をしてくれるアイリスと、何か当てようと尋ねてくるセリィ。


この辺はいつも通りかな。


「いや、今回は小物とかかな。全員に買ってきたよ」

「ありがとうございます、エルダート様」


嬉しそうに微笑むレイナさん。


その笑顔だけで次もまた買いたいと思えるから俺も現金なやつだと思う。


ちなみに、食べ物じゃなくてもアイリスはテンションを落とさずに嬉しそうにしてくれていたので、実に可愛い。


俺から貰えるものなら何でも嬉しい……そんな事が伺える笑顔なのが反則的だと思う。


セリィも、どちらでも問題ないのかちょっと嬉しそう。


アプローチは積極的だが、表情からは読み取りにくいミステリアスな顔も持つセリィだが、それなりに時を共にすれば手に取るように分かってくるというもの。


やはり時間は偉大だね。


「じゃあ、レイナから。目を閉じてくれる?」

「はい」


なんの疑いもなく素直に目を瞑るレイナ。


そのレイナに近づくと、予め付け方を教わっていたのでそっとレイナにそれを着ける。


「はい、これでいいよ」

「まぁ……素敵ですね」


鏡を見て嬉しそうに微笑むレイナ。


レイナに贈ったのは、サークレットだ。


金髪に映えるような、簡素なデザインながらもレイナの魅力をそっと引き立てそうなそれに、一目見たい瞬間からレイナに贈ろうと決めた一品。


少し高めの値段設定ではあったが、お金に困ってない今世なので婚約者のために惜しむことなく買ったが……気に入ってくれたようなので一安心する。


「エルダート様、ありがとうございます」


この笑顔、プラスイレス。


そうしてレイナに軽く微笑んでから、次にアイリスに視線を向ける。


「アイリスも目を瞑ってくれるか?」

「分かりました!」


こちらも疑うことを知らぬように素直に従ってくれるが、2人とも可愛いので俺以外にはちゃんと警戒するんだよ?


そんな事を思いながら、軽くアイリスの髪に触れると、手ぐしで解してから、買ってきたそれで纏める。


「はい、出来たよ」


アイリスに買ってきたのは、髪留め……まあ、シュシュに近しいものだ。


いつもはストレートなその水色の髪を、ポニーテールにしてみたが……いやはや、うさ耳美少女のポニーテールというのもありだね。


「えへへ……似合いますか?」

「うん、可愛いね」

「えへへ……」


照れ照れなアイリスさん。


相変わらず癒し系なうさ耳美少女さんだね。


そして、最後に視線を向けるのはセリィだ。


「セリィ」

「ん」


名前を呼んだだけで目を瞑るセリィ。


間違ってないけど、それでいいのだろうか?


そう思いつつも、そっとセリィに触れる。


出会った時はどう見えも俺より年上の印象だったのに、ハーフヴァンパイアという種族柄か、ここ数年であまり見た目に変化がない様子。


今では似たり寄ったりの背丈になったが、まあ、セリィはセリィなので気にすることないだろう。


「はい、いいよ」

「……ん、どう?」

「うん、似合ってる」

「ふふん」


ドヤ顔気味だが、嬉しさは隠せないセリィ。


短いライトグレーの髪に付けたのは、ちょっとオシャレなヘヤピン。


見た時に、セリィに似合いそうだとは思ったが……俺の目も捨てたもんじゃないね。


そうして、三者三様に俺からのお土産を嬉しそうに眺めてから、色々と楽しげに話をするが……にしても、これだけ喜ばれると買ってきた良かったと心から思えるから不思議だ。


三人の輪の中に、アイーシャも加わり、俺が買ってあげたものを見せて話に加わる。


馴染んでいるようで何よりだが、アイーシャが居ることに違和感を覚えなくなってる俺の感覚もそれなりにガバガバなのかもしれないなぁ。


まあ、いいけどね。


アイーシャが嫌じゃないなら、いつまでも居てくれて構わないし。


そうして、夕飯までの時間を和やかに過ごすのであった。


トールも嫁たちにお土産買ってたはずだけど……渡せているかは不明だなぁ。


まあ、あのイケメンは上手いことタイミングを見てそれを使って時間稼ぎをするだろうし問題ないか。














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