第164話 義兄勝負
「やあ、エル。思ったより早く来てくれたね」
「おはようございます、アクセル義兄様。それに……シュゲルト義兄様も御一緒でしたか」
アクセル義兄様の元に通してもらうと、室内ではアクセル義兄様とシュゲルト義兄様がチェスをしていたようで、一緒に居た。
思わぬ組み合わせだが、相変わらず義兄さん達は本日も見目麗しいく、目が疲れるくらい輝いていた。
LEDを直視してる気持ちになるが、もう少しイケメンオーラ抑えても大丈夫ですよ?と、軽く思ってはおく。
まあ、それが抑えられるのはきっと、プログレム伯爵家のようなごく一部の技術の持ち主なのだろうけどね。
「おはよう、エルダート君。さっきチェスに誘われてね。今のところ全敗だよ」
「シュゲルト義兄様がですか?」
「うん、私では勝てそうにないね」
「シュゲルト殿は、話せる御仁のようだし、久しぶりに楽しい勝負だったよ」
帝国の皇子とはいえ、王太子相手に勝っていいのかと思ったが、2人が予想よりも打ち解けているからこそなのだろうと察する。
「これからアクセル殿を案内するんだったね。よろしく頼んだよエルダート君」
「はい、シュゲルト義兄様は本日もお忙しいですよね?」
シュゲルト義兄様も誘いたい所だが、大国であるダルテシアの王太子である、シュゲルト義兄様の時間はそう簡単には取れないのでダメ元で尋ねてみると、シュゲルト義兄様は肩を竦めて言った。
「まあね。これでも王太子だし。今度暇な時にでもお忍びに連れてってよ」
「分かりました」
「その時は僕も連れてって欲しいかな。エルとシュゲルト殿とのお忍びも中々楽しそうだし」
「その時はアストレア公爵も誘おうか」
「ああ、確かにそれは楽しそうだ」
さりげなく巻き込まれる我が義兄ジーク義兄様。
多分、アクセル義兄様歓迎の城での晩餐なんかで、ジーク義兄様も参加して、その時にアクセル義兄様とも知り合ったのだろうなぁ。
俺の姉であるレフィーア姉様の旦那さんで、大国ダルテシアの名門公爵家の当主ともなれば、会わない道理もないだろう。
「――誰が一番、エルの義兄として相応しいか決めてもいいかも」
……サラッと巻き込まないで欲しいのだが、アクセル義兄様、別に俺の義兄として相応しくなっても構わないんじゃないの?
レインガチ勢のアクセル義兄様が勝ちに拘りそうもないが、意外なことにシュゲルト義兄様はノリノリのご様子だ。
「それは面白そうだね。アストレア公爵もエルの義兄だし、楽しそうだ」
「あの……そもそも、お二人共そこまでそのポジションに拘りないですよね?」
「何を言ってるの。私はエルダート君の義兄というポジション結構気に入ってるんだよ?仕事も手伝ってくれるし、可愛い義弟だと思ってるよ」
俺の正妻のレイナの兄であるので、その関係で俺の義兄にあたるシュゲルト義兄様は、そんな事を笑顔で言うが、仕事の部分が本音の中で一番強そうに思えたのは気のせいではないだろう。
シュゲルト義兄様は、マルクス兄様に近いタイプだし、便利なタクシーの俺は義弟として良いのだろうと可愛くないことを考えてしまう。
まあ、それ抜きにしてもシュゲルト義兄様とはそこそこ仲は良いとは思うけどね。
たまに遊びに行くこともあるし。
「僕も最近面白い義弟が出来たから、楽しくおもちゃ……もとい、可愛い義弟と仲良くなりたいのさ」
アクセル義兄様なんか、完全に俺をオモチャにする気満々なのが見え見えだし。
というか、言葉にしてる時点でどうかと思わなくもないが、まあ、アクセル義兄様からしたら俺という存在は面白いのかもしれないなぁ。
「ちなみに、エルは兄の中では誰が一番なのかな?あ、マルクスくんは抜きにしてね」
「確かに気になるね。エルダート君はマルクス以外だと私とアクセル殿とアストレア公爵の誰が良いのか……興味あるね」
何故そんな質問をするのは分からないが、何故かマルクス兄様は抜きになってしまった。
まあ、実兄のマルクス兄様への敬愛は確かに強いので仕方ないが、どう答えても角が立ちそう……でもないか。
ジーク義兄様はその辺寛容な大人の男性だし、強いて言うならこの話をレフィーア姉様が聞いて俺がジーク義兄様を上げなければ少し拗ねそうではあるが、まあ、なんとかならなくもない。
シュゲルト義兄様は仮にここで名前を出さなくても、あっけらかんと笑って受け入れて、「じゃあ、頑張って尊敬できるようになろうかな」と平然と言いそうでもある。
そして、アクセル義兄様は言うまでもなく、レインが関わらないことなら特に気にすることもないだろう。
というか、言ってる本人としてもこの質問で俺の反応を見て楽しみたいので、自分が選ばれなくても気にしなさそうでもあった。
「皆さん、俺の理想の兄様ですよ」
無難な答えでその場をやり過ごすが、本心なので仕方ない。
実兄であるマルクス兄様は元より、ジーク義兄様も、シュゲルト義兄様も、アクセル義兄様もそれぞれカッコイイ兄なので、俺としては目指すべき背中なのである。
尊敬できる人が今世は多くて、本当に忙しいものだが、理想が近くにあるとモチベーションが保てていいものだね。
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