第161話 夜戦後の戦士

「……おはようございます、殿下」

「うむ……ゆうべもお楽しみでしたね?」

「……ええ、頑張りました」


朝からまるでつい今しがた戦いを終えたような戦士の表情を浮かべる我が騎士トール。


きっと、クレア達との夜戦が大変だったのだろうが……まあ、いつもの事といえばいつものことだろう。


「……なんでしょうね。好きな相手の気持ちに応えていると、戦うよりも体力を削ってる気になります。これが幸せ税というやつなのでしょうか」

「俺も何れ徴収されそうだけど、トールだけ税率が90%くらいなのかもしれないね」


なんという圧政だろうか。


まあ、嫌ではないのは見てれば分かるし、とりあえずそっと滋養強壮剤の新作を渡しておくことにする。


「でもあれだね。これから更に嫁が増えたら、ますます大変になるし、まだ幸せなのかもね」

「いえ、これ以上は絶対増やしませんから」

「いやー、そう思ってても増えるのものは増えるしねぇ……」


トールの場合、イケメンで亜人でうさ耳なので、モテないはずもなく、そしてクレアやケイト系列の人達が集うのは容易に予想がつくというもの。


モテる男も中々大変そうだが、見てるだけなら楽しいので温かく見守ることにしよう。


「というか、僕より殿下の方が絶対大変になると思いますよ。絶対婚約者が更に増えると予想します」

「おいおいトールくんや。俺がそんなにモテると思うかね?既にアイリスやレイナ、セリィという可愛い美少女にモテた時点で俺のモテ運は使い切ってるのさ」

「いえ、アイーシャ様のような例もありますし……」


おいおい、アイーシャは婚約者ではなく友達だよ?


そりゃ、可愛いし一緒にいて落ち着くけど、向こうとしては俺のような目立つ存在に嫁入りなんて嫌だろうし、流石にそんな関係にはならないだろう。


……多分。


「殿下は僕以上に好かれる何かを持ってるので、最終的に嫁が100人越えても驚きませんよ」

「アイリスの兄としては驚いて欲しいところだけど……確かに俺も、トールの嫁が1000人越えても驚かない自信はあるかも」

「その人数はかなりホラーですね」


100人も割とホラーな気はするが、余程の好色でもないとその人数の相手は大変そうだなぁとしみじみ思う。


「とりあえず、アイーシャ様はそのうち本当に4人目になりそうですし、殿下の成人と結婚までに10人は軽く越える可能性も高そうですね」


なんて恐ろしいことを言うのだろう。


そんなに婚約者増えたら、相手する自信がないし、御遠慮したい所。


まあ、俺に関してはそんなに増えるわけもないし、気楽に構えることにはするけどね。


モテモテフェロモンが強いどこぞのうさ耳イケメン騎士とは違うのだよ。


「その前に、トールが10人の子持ちなってる可能性の方が高そうだけどね」

「いえいえ、流石にクレアとケイト2人で10人は無いかと……」


俺の成人まであと5年程度。


1年に1人のペースは現実的とは言えないが、クレアとケイトなら成し遂げそうでもあるのは恐ろしいところ。


まあ、それ以上に嫁が増えて子供が増える確率の方が高そうではあるが、言わないでおこう。


これも優しさというやつさ。


「……殿下、謎に優しい視線を向けるのはやめてください。なんか不安になります……」


不本意ながら、気持ちが伝わるらしく、何とも嫌な顔をされるが、他にどうしろと?


「仕方ない。とりあえず、トールが大好きな滋養強壮剤を、もう少し効き目が強くて、副作用の無い新型をのやつを開発してみるよ」

「いえ、好きでないのですが……というか、本当に副作用無いんですよね?」

「実際不都合無いでしょ?」

「怖いくらいに無いですけど……」


植物の精霊であるリーファと作ったものなので、自然由来の効能の強いものが作りやすかったりするのだが、トール的には副作用の無いという言葉が逆に不安に感じるのだろう。


まあ、俺だってリーファの力を知らずに受け取ったら絶対疑うとは思うけど……その辺は嘘はついてないので、堂々としておく。


「さて、そんな事よりも、護衛の方よろしくね」

「ええ、殿下のメインの護衛はアイーシャ様がするんでしたね」

「そう、だからその分のリソースをなるべくアクセル義兄様に向けといてよ」

「承知しました」


頼れる騎士の面構えになるトール。


嫁には弱くても、他に負けるものがない男の面構えはやはり凄まじいものだ。


まあ、女の下に敷かれるのも男の甲斐性(By バルバンの名言)らしいので、多少嫁に弱い方が夫婦円満でもあるのかもしれないな。


俺の場合は、婚約者皆優しいし、そういう事も無さそうだけど、惚れた弱みというのはやはりあるので、多少婚約者たちに甘いのは仕方ない。


何にしても、思ってた程トールの回復も遅くなさそうだし、アクセル義兄様のエスコートに支障が無さそうで一安心。


レインは凄腕だけど、不足の事態になった時に今くらいのトールがフォロー出来れば問題はないはず。


俺はまあ、アイーシャの足を引っ張らない適度に守ってもらうとしよう。


何にしても今日も一日頑張るとしますか。













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