第114話 妻帯者の苦労

「……おはようございます、殿下」


起きてから、婚約者達が着替えを始めていると、俺は廊下に出て支度を待つ。


別に婚約者なので、着替えくらい覗いても構わないのだが……抑えが効かなくなりそうなので自重している。


俺も割と直ぐに身支度は整うので、三人が揃うまで待っていると、俺の騎士のトールが疲れきった様子で挨拶をしてくる。


ふむ……


「昨夜もお楽しみだったようで」

「……クレアが寝かせてくれませんでした」


寝不足に見えるが、この数年でついに騎士団長クラスの世界へと足を踏み入れ……否、踏み抜いたトールにとって、支障がないレベルのようだ。


フレデリカ姉様も既にシンフォニア王国の騎士団長を超えたらしいが……姉と親友が年々強さがインフレし始める件について。


「それはなんとも贅沢な朝ですな」

「いえ、殿下には負けます」


とはいえ、俺はまだ何も出来ないしなぁ……


「トールもどうせそのうち他にも妻が増えるでしょ」

「怖いこと言わないでくださいよ」


とはいえ、トールは俺の騎士だしその可能性の方が高いと思う。


貴族から、娘を嫁に出したいという声もあるらしいが、トールはあまり乗り気ではない上に、何だかんだでツンデレなのでクレアのことが好きだから変に家格が高い令嬢は嫌なのだろう。


そんな本人の思いとは対照的に、トールはこの数年で更にイケメンへと成長しており、背丈がついに180cmを超えたらしい。


俺との身長差が深刻だが……何れはそれを追い抜きたい所存。


「とはいえ、クレアが妊娠するまでにはもう一人くらい娶りそうだけどね」

「クレアだけでも大変なのに……」


毎晩毎晩、飽きることなくクレアに蹂躙されているトールは絶望の表情を浮かべる。


どんだけエキサイトしてるのやら。


「孫の顔を楽しみにしてるよ」

「いや、殿下は僕の祖母じゃないですよね?」

「そこは祖父でしょ」

「姑が嫁に言うようなセリフに思えたので」


誰が意地悪姑か。


意地悪でなくても、言う人もいるだろうけど、それはそれ。


「殿下こそ、早く成人してアイリスと子供を作ってくださいよ。甥や姪の顔が早く見たいです」

「シスコンなのにそんなセリフ言っちゃうの?」

「前々から思ってましたけど、殿下って僕がアイリスを過剰に愛してると誤解してませんか?」

「事実だもの」


相手が俺だから、こうして余裕なのだろうが、何処の馬の骨とも知れぬ奴なら絶対断固として拒否していたはず。


「まあ、それはいいですけど……殿下、例の薬ください」

「今夜も使うの?」

「……使わないと、相手出来ないんですよ」


トールが最近愛用しているのが、俺特製の精力剤だ。


夜にエキサイトするのに効くらしく、植物の精霊魔法で生み出した物をたまにお小遣い稼ぎに売っていたのだが、トールも愛飲者になってしまっていた。


効き目は、死にかけの人でも全盛期並みにハッスル出来るらしいが、副作用等は一切ないというなんともチートな一品。


近頃、俺が流したものが高値で貴族の間で高値で売られてるらしいが、俺もそこまで量を流してないので直接頼んでくる貴族も居るほどだ。


「あれ、おかしいくらいに効きますからね。副作用無いとは嘘としか思えません」

「実際、不都合ないでしょ?」

「それはそうですが……」


俺も婚約者が三人も居るし、将来必要になるかもと思って、俺と契約している植物の精霊のリーファに色々と聞いたところ、かなりガチな物を作れるようになっていたのだ。


トールには実験と同情からかなり渡しているが、用法用量を守りやすい上に、中毒性とかも一切ないというのが本当に凄いと思う。


というか、妻が一人でもこれが必要って、本当に激しい夜をエンジョイしているようで何よりだ。


「エル様、お待たせしました」


そうこうしていると、アイリスが最初にやって来た。


駆け寄ってくるうさ耳美少女の頭を撫でると嬉しそうに耳をピクピクさせるアイリス。


うむ、可愛い。


「お兄ちゃん、クレアさんとはどう?」

「あ、ああ……上手くやってるよ」

「そっか、なら良かった」


まさか純粋な妹に夜が激しすぎて……なんて言える訳もなく、トールは無難に答えるが実際上手くやれてるとは思う。


果たしてクレアがトールの子供を何人産むのか……興味が尽きないところだが、外野から見れるこの感じは悪くない。


俺も同じ立場なら婚約者を増やしたいとは思わないけど。


三人も居れば十分だし、変に混ざって気まずくなるのも嫌だしね。


それに、そもそも増えるも何も俺の立場以外で惹かれる要因がないのでそれで来られてもねぇ……


そんな俺の考えが伝わったようにトールは呆れた顔をしていた。


まるで、「殿下だって、そのうち絶対婚約者が増えますよ」と言わんばかりだが……ここ数年で増えてないのでそれはないだろう。


そんな風にしていると、レイナとセリィもやって来たので皆で食堂に向かって朝ごはんを食べるが……美味しそうに沢山食べるアイリスに、上品に小さな口で少しづつ食べるレイナ、そして無言ながらも早く食べていくセリィと思い思いに食べていてその姿は何とも微笑ましかった。


うん、やっぱり、俺の婚約者は可愛いね。








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