第113話 十歳になりました

この世界に転生してから、10年の月日が経った。


爵位を貰って、婚約者が出来てからで数えると三年……いや、四年目に入っているかな?


七歳目前だったのが、現在は十歳になり、背丈も少しは伸びて……うん、伸びてるはず。


そんな俺の朝は大抵は柔らかい感触と温かい温もりと、落ち着く匂いで始まる。


「むにゃ……えるしゃまぁ……」


左手に見えますは、水色の髪とうさ耳が愛らしい婚約者のアイリス。


ここ数年で段々と大人っぽくなってきて、胸も膨らんできたことにより、徐々に俺を悶々とさせている癒し系うさ耳美少女さんだ。


「すぅ……すぅ……」


右手に見えますは、金髪の癒し系美少女の正妻のレイナ。


こちらも、日々大人びてきており、年々俺を虜りにするような包容力も高まってきていた。


アイリスとは少し別方向ではあるが、癒し系で正妻らしく俺を支えてくれる正統派癒し系美少女さんだ。


「はむはむ……」


そして、最後に俺に覆いかぶさっているのは、最初に会った頃から十歳前後の背丈と容姿のまま変わらない安定感のある美少女のセリィ。


両腕を腕枕でアイリスとレイナに取られているが、俺の首元を甘噛みしているセリィは、俺の血が大好きなハーフヴァンパイアの女の子だ。


今は血を吸ってなく、甘噛みだけだが……なんか、血を吸う以外でも俺を甘噛みするのが気に入ったらしく、こうしてたまにじゃれて来て微笑ましいものだ。


そんな風に婚約者に囲まれている俺は、一見するとかなりのリア充だろうが……少なくとも、トールやマルクス兄様と比べるとそうでも無いと思われる。


トールは、ついこの前成人を迎えてしまい、クレアと正式に結婚したのだ。


この四年ほど迫られて、何とか我慢してきたトールと別の意味で我慢をしてきたクレアだが、トールとの結婚初夜はそれはそれは大変にエキサイトしたらしい。


翌日のトールの疲労感がそれを物語っていた。


うん、きっと精も根も搾り取られたんだろうね。


子供もそのうち出来そうだが、ダルテシア王国にあるこの屋敷に住んでいて、レイナやアイリスの護衛をして貰っているクレアなので、場合によっては乳母とかで残ってもらうのもいいかもしれない。


ちなみに、俺のお世話係だったメルとその夫で護衛をしてくれていたグリスは俺の引き抜きの話にあっさりと頷いてくれてこの屋敷で働いてくれていた。


メルの子供も三歳になり、可愛らしい女の子だが、その子もそのうち、ウチで働きたいと言ってくれて微笑ましいものであった。


そして、マルクス兄様だが……こちらも、実は先日盛大に式を上げていた。


トールより少し年上であったマルクス兄様も成人したことで、正式に妻を迎えることになったのだ。


相手はなんと、帝国の第1皇女様。


帝国、それは、ダルテシア王国よりも大きな規模のこの大陸の覇者とも言える国であった。


大国のダルテシア王国だが、その上を行く帝国の、しかも第1皇女様を妻に迎えるとか、マルクス兄様凄すぎ。


しかも、この婚約は相手からの希望……というか、その皇女様の希望によって叶えられたもので、前にマルクス兄様が帝国に行った時に一目惚れした皇女様がアプローチをかけた結果、先日ついに結婚に至ったらしい。


俺も何度か話したが、優しく美しい人で、マルクス兄様と釣り合う美少女さんであった。


個人的には、アイリスやレイナ、セリィの方が好きではあったが、まあ、婚約者を好きなのは当たり前なので贔屓目も入ってはいると認めておく。


贔屓目なしでも、凄いと思うけど。


なお、マルクス兄様だが、側室も迎えることになるのだろうが、正妻の格が高すぎて、父様やマルクス兄様も色々と大変そうに選定していたが……『妻は一人がいいなぁ……』と、呟いていたマルクス兄様も実に大変そうだ。


王位はもうしばらく先にはなるのだろうが、マルクス兄様に渡されることは疑いようがなかった。


俺は既に爵位を貰っているし、王位継承権はあっても、その気は微塵もなく、本当は捨てたいところだが、マルクス兄様に何かあった時のためと父様とマルクス兄様からの願いで一応持っていた。


ちなみに、第2王女で、マルクス兄様の双子の妹のリリアンヌ姉様は成人と共に他国に嫁いで行って、フレデリカ姉様はシンフォニア王国の騎士団で本格的な稽古を行っているが……婚約者も一応居たりする。


ある程度、騎士団で満足いくまで騎士をやったら、家に入るらしいが、それが何時のなのかは、本人によって変わるだろう。


ちなみに、俺への稽古は続けてくれていた。


優しい姉の息抜きに俺の稽古は丁度いいのだろう。


そうして、ここ数年で色々と変わったこともあるが、変わらないことあったりする。


「……うん、今日は井戸水の気分かな」


俺の水への信仰はそのままに、かつ、昔よりも遥かに深い愛へと変わっていた。


もう時期、婚約者の誰かが起きるだろうが……それまでは、この柔らかく温かな温もりを大切にしておこう。


ちなみに、俺が寝ている時に無意識にラッキースケベをすることも変わってないらしく、たまに起きると頬を赤らめた婚約者が目に映るが……何をしたのか、自分でも分かってないので、ある意味ドキドキだったりする。


セリィ曰く、「……主はテクニシャン」らしいが……本当に何をしてるのやら。


さて、今日も頑張ろうかな。









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