第75話 生存報告
「……っと、もうこんな時間か」
レイナと話し込んでいると、いつの間にかお昼近くになっていた。
話してて、落ち着くからか、本当にあっという間に感じる。
もう少し話していたが……3日間も寝込んでいたので、先程少し甘い物を食べたきりだから、そろそろきちんと食事を取らねば。
成長期だしね。
「お昼はどうされるのですか?」
「うーん、適当に外で食べようかなぁと思ってたけど……レイナも来る?」
「行きたいですが、私は……」
チラッと足を見るレイナ。
そういえば、この世界って車椅子とかないのかな?
俺は見たことないけど……
「じゃあ、それはまた改めてかな。レイナが移動出来るようになるアイテムを作っておくよ」
「そんな物があるのですか?」
「うん、だから、その時は一緒に出掛けようね」
「はい」
ニッコリと微笑むレイナ。
うむ、可愛い。
そのレイナの元から、少し寄り道をするのは、ダルテシア王国の国王陛下の所。
忙しそうな国王陛下だったが、アポなしで割とすぐに会えた。
「レイナとは話せたか?」
「ええ、仲良くやれそうです」
「そうか、ならいい」
安心したような国王陛下。
本当にレイナのこと好きだよね。
「それで、一つお願いがあるんですが……」
俺は、父様とマルクス兄様を改めて連れてく日程に関してと……あと、レイナの車椅子作りに関して相談をする。
ウチの国で作ってもいいが、比較的材料の揃いやすい大国のこの国の方が技術力などでも良さげなので、頼んでみる。
「うむ、それはいいな!すぐにでも作らせよう!」
娘のための提案にノリノリな国王陛下。
色々と相談するが、設計図なんかも渡して明日には仕上がるそうだ。
凄いな大国って。
何にしても、これで、明日にはレイナも自由に動けるようになるし楽しみだ。
国王陛下の元から去ると次は転移で、一度アストレア公爵家に戻ることにする。
レフィーア姉様への生存報告と……ついでにお昼を貰いに。
外で食べたいところだけど、ジーク義兄様がレフィーア姉様にさり気なく伝えてそうだし、お昼はそっちの方が美味しそうだ。
「エル!」
「おっと……すみません、姉様。ご心配おかけして」
転移用の部屋に飛んで、アストレア公爵家の使用人さん達に挨拶をしつつレフィーア姉様を探していると、廊下でばったりと出会って、抱きつかれる。
その表情は無事で良かったと、安堵してくれてるようだ。
「ううん、無事で良かったよー!でも、自分のことも少しは考えないとダメだよー!」
「はい、すみません」
弟のことを心配くれる姉か……前世では考えられないが、悪くない気分でもある。
まあ、心配かけるのは良くないので今度からは事前に言うことにするけど。
「お父さん達にはもう報告した?」
「いえ、まだです」
「じゃあ、今から一緒にご飯食べよう!連れてきてエル!」
一緒にご飯は予測していたが、皆でとは予想外だった……でも、確かにその方が早く済むか。
そう考えて、シンフォニア王国へと転移すると、やはり知らせが届いていのか家族や使用人からかなり心配された。
……なんか、本当にすみません。
フレデリカ姉様なんて、物凄く心配して、同時に無茶した俺に怒っていたけど……今度一日何でも言うこと聞くということで、なんとか許して貰えた。
「何にしても、無事で良かったよエル」
「そうだな」
「すみません、父様、マルクス兄様」
そして、父様とマルクス兄様はというと、俺の顔を見て少しホッとしていたので、それなりには心配してくれてたのだろう。
「それでエルよ。話は聞いたか?」
「えっと、婚約と爵位ですよね?」
「うむ、我が国とダルテシア王国で男爵位をそれぞれ与えることになる。領地を与えるかは未定だが……何にしても、無理強いはしない。お前が進みたい道があるなら応援しよう。名ばかり貴族というのも、それはそれでいいからな」
「ありがとうございます、父様」
なんというか、優しさは凄く嬉しいけど、俺はこの人達に報い得るのか少し不安にもなる。
「難しく考えなくていいよ」
そんなことを見透かしたように、マルクス兄様は微笑む。
「エルはエルのやりたい事をすればいい。僕も僕で父上の跡を継ぐのを全力でやるからね。ただ、たまに手伝ってくれると嬉しいかな」
「ええ、それはもちろん」
過労死しそうなマルクス兄様の手助けは今も昔も割と急務に思える。
もう少し優秀な人材でも見つけたいところだが……とりあえずは、まだまだ先の話だし、今は魔法の努力をもっとして、あと婚約者との時間を作ろう。
そうして、家族へ生存報告をしてから、お昼を揃って食べるが……なんというか、姉達が揃うとやはり話が盛り上がり、中でも俺の婚約に関してそれはもう、熱烈にフィーバーしたのは言うまでもないだろう。
まあ、そりゃ、弟の正妻と側室が決まればそうなるよね。
むしろ、国王になるマルクス兄様より先に決まってしまったが……あっちは、色々と選定に時間がかかるのだろう。
何にしても、家族で揃っての食事は楽しくて、レイナの車椅子が出来たら、アイリスも含めて皆で食べたらいいなぁと、思いながら、久しぶりの食事を満喫するのであった。
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