第59話 王都到着

野宿を挟んで、街道を進むこと1日。


流石に夜に訪問するのもあれだったので、適当な所で野宿をしたが、翌日の昼前には無事、ダルテシア王国の王都へと着いたのであった。


尚、魔法で家を建てるという現象を見たクレアは、かなりびっくりして、「冒険者時代にこれがあったら……」と、偉く精神にくるものがあったようだが、直ぐにトールへの夜這い計画を立ててたので何とも逞しいものだ。


「わぁ……!」


馬車の窓に張り付いて、キラキラした瞳で外を眺めるアイリス。


そもそのはずで、ルドルフ伯爵が統治していたトイズの街もかなりの都会だったが、その何倍もの規模の人や物で溢れているのがダルテシア王国の王都だからだ。


「あ!エル様、エル様!あれがお城ですか?」

「ああ、あそこがダルテシア王国の王城だね」

「大きいですねぇ……」


ウチの国の王城もかなりの規模だが、大国の一つと言われているダルテシア王国の場合はそれより更にランクが違う規模であった。


多分、俺とアイリスは初見だと確実に迷子になるな。


「あそこにも行くんですよね?」

「ああ、挨拶には行かないとだね」


流石に第2王子ともなると、他国の王様をスルーして帰る訳にも行かないので、一応会う予定なっている。


まあ、とはいえ、レフィーア姉様と会ってからになるが。


滞在はレフィーア姉様の居るアストレア公爵家に滞在させて貰うことになっており、家族の再会を楽しんでから、父様とマルクス兄様をダルテシア王国の国王陛下の元に送るついでに俺も会うような感じかな。


色々と、国同士で話し合わないと行けないことがあるのだが、何しろシンフォニア王国とダルテシア王国はかなり距離があるので、中々双方共機会を作るのが難しい。


そこで、俺が運び屋をする訳だが、向こうの国王陛下にも俺の転移の魔法に関しては話をしてあるそうだ。


父様曰く、かなり信用出来る人らしいので、そこまで心配はしてないが……便利に使い潰されそうになったら逃げようかな。


「エル様のお姉様に会うの楽しみです!」

「そっか、アイリスはレフィーア姉様に会ったことなかったね」


随分と前から一緒に居た気がするが、レフィーア姉様が嫁ぐ頃は出会ってすら居なかった。


そう考えると、そんなに長い時間でもないが……不思議と長く一緒に居る気がするくらいにはアイリスもトールも馴染んでいた。


「はい、どんな方なんですか?」

「優しくて美人な人だよ」


まあ、嫁いでから会ってないがそんなに変わってないんじゃないかと思われる。


無論、中身の話だ。


外見は、相応に益々美しくなっていると、ルドルフ伯爵は言っていたのでその通りなのだろう。


嫁ぐ前も美少女から美女への変化中な感じだったのだ、きっと今は完璧な美人さんになってることだろうと予想できる。


にしても、ウチの家族の顔面偏差値高すぎ問題について。


この世界に転生してから、あんまり顔面が残念な人には会ったことない気がする。


ウチの家族とアイリスやトールは別格にしても、他の人たちもそこそこ整った容姿の人が多いように感じるのは気のせいだろうか?


「美人さん……エル様は、その、大人の女性が好きですか?」


チラリと、外でイチャつく(尚、トールは抵抗してる模様)クレアを見てから尋ねてくるアイリス。


うん、とりあえずクレアを基準にするのは止めてね。


美人だけど、俺の好みじゃないし、そんな目で見るつもりもない。


というか、何が悲しくて親友を想う人を奪わなくてはならないのか。


俺はそんなに鬼畜でも女に飢えても居ないのだ。


「そうだね……まあ、俺は一緒に居て楽しい女の子が傍に居るといいかな。アイリスみたいに」

「そ、そうですか?」


嬉しそうにはにかむ、アイリス。


無論、外見が美しい人は見てて楽しいが……あんまり美人過ぎると別次元に思えて、観賞用で良い気がしてくるから不思議だ。


それに、前世で人間、外見より中身の方が大切だと嫌という程に分からされた。


どっちも残念な人と外見は良くて中身が残念な人ばかりだったので、今にして思うと余計に悲しくなるが……それでも、今世ではウチの家族やアイリスみたいな優しい人も居ると分かってホッとしたものだ。


まあ、人のこと言えるほど俺も良い性格と容姿じゃなかったけどね。


今世は前世よりマシだが、性格はそんなに良くないと思うし。


特に、ウチの家族やアイリスを見た後だと自分の汚れがくっきり見えて虚しくなるが……うん、強く生きよう。


いつか浄化されることに願いつつ、アイリスの頭を撫でる。


アイリスは外も中も一緒にいて落ち着く可愛い女の子だが、成長して大人の女性になったら……うん、勝てる気がしない。


とりあえず、クレアが悪影響を与えないように対策を練らなければ。


そうして、馬車での時間はほとんどアイリスとまったり過ごしていたが……外ではトールとクレアによる一見落ち着いてるようにみえて、高度な駆け引きが行われているのだが……まあ、それはそれ。


友人の理性の強さを願いつつも、孫を待つお祖父ちゃんの気持ちで穏やかに見ていると、トールは助けろと言わんばかりの視線を向けてくるのでスルーする。


俺も大人になったものだ。




















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