これまでの登場人物紹介

〇アールクヴィスト領の人々


・ノエイン・アールクヴィスト

本作の主人公。現時点(開拓4年目)で18歳。

アールクヴィスト士爵家当主。ロードベルク王国の北西の端、ベゼル大森林の中に領地を持つ。

傀儡魔法使いでゴーレムの扱いに異常なまでに長けており、また子どもの頃に古今東西の膨大な書物に触れて育ったため、王国の一般的な常識から逸脱した知識や価値観を持つ。


キヴィレフト伯爵の妾の子として生まれ、屋敷の離れに閉じ込められて子ども時代を過ごした。この境遇のせいで性格が歪んでおり、ややひねくれた一面がある。

自身を庶子として冷遇し続けた父親・キヴィレフト伯爵に強い恨みを抱いており、悪徳領主である父とは違う「民の愛を集める領主」として幸せに生きることをもって復讐を成そうとしている。

一般的な領主と比べると過剰なほどに自領の領民たちを愛し慈しもうとしているが、それは「自分が領民から愛されたい・慕われたい」という強い欲求の裏返し。

逆に領外の人間は基本的に信頼せず、極端な自衛に走ることもあるが、妻の親族や部下の家族などにはある程度は心を許す。また、明確な利害関係で繋がった相手には一定の信用も置く。


・マチルダ

ノエインの奴隷であり恋人。兎人。現時点で24歳。

もとはノエインの生家であるキヴィレフト伯爵家の奴隷で、自身が15歳、ノエインが9歳のときにノエインの世話係となった。

普通は蔑まれる獣人奴隷でありながら、ノエインから読み書きや計算、書物に記された格闘術などの知識を授けられ、大切に扱われ続けるうちに彼に絶対の忠誠と愛を誓うようになる。

王国の平均水準以上の知識と知恵、獣人ならではの身体能力を活かした戦闘技術を持っているため、その能力をもってノエインの副官のようなポジションに就いている。


・クラーラ・アールクヴィスト

ノエインの妻。隣領の領主であるケーニッツ子爵の四女。現時点で18歳。

ケーニッツ子爵の提案をきっかけにノエインと結婚した。政略結婚の色も強かったものの、夫婦仲は良好。

また、先にノエインの恋人であったマチルダとも「お互い能力や立場を活かしながら、それぞれのかたちでノエインを支える」という意見で一致しており、身分を超えて同志や親友と呼べる関係を築いている。よく二人一緒にノエインのベッドに入る。

学問、その中でも特に歴史に造詣が深く、アールクヴィスト領内に学校を設立して運営を手がけ、領民の学力向上に貢献している。また、いずれは歴史学者としても活動したいと考えている。


・ユーリ

アールクヴィスト士爵家に仕える従士長。元傭兵団長。現時点で38歳。

大柄な偉丈夫で、剃り上げた頭と顎を覆う髭が特徴。訳あってキヴィレフト伯爵領軍から追われる身であり、変装の意味もあってこのような容姿をしている。

従士長という立場にふさわしい実力を持っており、白兵戦の強さでは領内でも随一。また「対話魔法」の才を持つが、その能力は一流の対話魔法使いと比べると劣る。

元傭兵団長という経歴もあり、部下をまとめることに長け、一定以上の学力や教養も持つ。ノエインからも大きな信頼を置かれており、彼の経験不足や精神的な未熟さを補う進言を行うことも多い。

妻であるマイとの間に、ヤコフという幼い息子がいる。


・マイ

アールクヴィスト士爵家に仕える従士で、従士長ユーリの妻。元傭兵。現時点で29歳。

明るく面倒見のいい性格。元は剣をとって戦う傭兵だったが、家庭を持ち息子も生まれた今では戦いからは離れている。

「アールクヴィスト領婦人会」という互助組織を運営しており、故郷や親族を失って移住してきた難民出身者が多いアールクヴィスト領で、女性たちが家庭生活や出産・育児に困らないよう広く手助けしている。

夫であるユーリとの間に、ヤコフという幼い息子がいる。


・ペンス

アールクヴィスト士爵家に仕える従士。元傭兵。現時点で31歳。

トカゲのような鋭い目が特徴で、体格は細身。飛び抜けて秀でたところはないが、十分以上の戦闘力を持ち、頭もそれなりに良く、部下の扱いもそれなりに上手く……と器用なため、従士副長のポジションを務めている。

普段は領都ノエイナ内の治安維持から開拓作業の監督まで幅広い仕事をこなしており、場によってはマチルダとともにノエインの護衛を務めることもある。

独身街道を一直線に突っ走っていたところ、メイドのロゼッタの熱烈なアプローチを受け、晴れて結ばれた。


・ラドレー

アールクヴィスト士爵家に仕える従士。元傭兵。現時点で35歳。

自他ともに認める醜男で、言葉遣いも垢抜けず、他の従士と比べると頭もあまりいい方ではない。

しかし、戦闘に関してはユーリに匹敵する実力者であり、戦術面の判断は適切で素早い。また粗野な雰囲気とは裏腹に人格的にも至極真っ当な人物なので、領軍兵士たちからの人望も厚い。

普段は領都周辺や鉱山村と繋がる林道の周辺を見回り、領の防衛や魔物退治を担っている。

その人柄に惹かれた領民の女性ジーナと結婚しており、彼女のお腹には第一子がいる。


・バート

アールクヴィスト士爵家に仕える従士。元傭兵。現時点で27歳。

自他ともに認める美青年で、コミュニケーション能力も優れている。その特徴を活かして、傭兵時代はかなり派手に女遊びをしていた。

ノエインに仕える従士となってからは地に足をつけた生き方をしており、人好きのする容姿や能力を活かして領内外の関係者との連絡役を担っている。元傭兵であるため戦闘もそれなりにこなせる。

ケーニッツ子爵領の領都レトヴィクで出会った料理屋の娘ミシェルに惚れ、出会って間もなくプロポーズして電撃結婚した。以来、夫婦仲はとてつもなく良好。


・アンナ

アールクヴィスト士爵家に仕える従士。現時点で20歳。

ケーニッツ子爵領レトヴィクの生まれで、実家は商店。店の手伝いをするうちに、優れた経理や事務の能力を身に着けていた。

また幼少期から開拓物語が好きだったこともあって、ノエインに見出されてアールクヴィスト領に移住。それ以来、領の財務や事務の仕事を担っている。

元々は引っ込み思案でおとなしかったが、仕事柄ノエインと接する機会も多いせいか、徐々にアールクヴィスト士爵家の気風に染まってしたたかな性格になりつつある。

同じく従士のエドガーと惹かれ合い、開拓2年目に結婚した。


・エドガー

アールクヴィスト士爵家に仕える従士。現時点で28歳。

王国南西部の開拓村の生まれで、元々は村長家の出身。西のランセル王国との紛争で故郷の村を失い、生き残った村民とともに北西部に流れ着いてアールクヴィスト領に移住した。

農村の村長家で教育を受けたこともあり、農業管理に関しては深い知識がある。その能力を活かして農民たちをまとめ上げ、領の農業責任者となっている。

超がつくほど真面目な性格で、日に日に増えていく農民たちをうまく管理し、ジャガイモや大豆など王国では珍しい作物の栽培にも適応しながら農業の規模拡大に貢献。役割柄ちょっと地味だけど実はものすごく有能な人。

同じく従士のアンナと惹かれ合い、開拓2年目に結婚した。


・ダミアン

アールクヴィスト士爵家に仕える従士。現時点で29歳。

レトヴィクの鍛冶師界隈でくすぶっていたところをノエインに見出されてアールクヴィスト領に移住し、領主お抱えの筆頭鍛冶職人になった。

奇抜な発想でクロスボウや千歯扱きといった発明品を生み出した異才。何気にノエインに次ぐチート人物。

才能と引き換えに社会生活能力に著しく欠けており、よくマイペースな言動をしていて貴族に仕える従士としての礼儀も怪しいが、職人としての能力はずば抜けているのでノエインには許されている。

独身で士爵家の屋敷に住み込みで暮らしているが、放っておけば倒れるまで仕事に没頭しかねないので、メイドたちに見張られている。


・クリスティ

ノエインの所有する奴隷。現時点で18歳。

南西部の出身。もともとは豪商の家の生まれで高い教養があり、実家の破産によって奴隷として売られていたところを、事務仕事のできる人材が欲しかったノエインに買われた。

当初は富裕層出身の自分が奴隷落ちしたことを受け入れられず、持ち主のノエインを含め周囲に攻撃的な態度を取り続けていた。しかし、ノエインのやや過激な教育によって立場を受け入れるとともに現実の中で前を見て生きようと決意し、今は意欲的に働いている。

財務担当のアンナを事務官として手伝いつつ、ノエインが遠方から取り寄せた商品作物の栽培実験の検証・記録を務めたりと、高い教養を活かして領の運営・発展に貢献中。

屋敷内に個室を与えられて暮らしている。仕事熱心になるあまりワーカーホリック気味になることもあり、ダミアンと合わせてメイドたちに見張られている。


・メアリー

ノエインの屋敷で働くメイド。現時点で18歳。

明るく元気な性格で体力もあり、屋敷内ではフィジカルを活かして掃除や水汲みなど体力仕事を主にこなしている。


・キンバリー

ノエインの屋敷で働くメイド。現時点で19歳。

クールで真面目な性格。屋敷内では給仕や、クラーラの身の回りの世話を主に務めている。

メイド3人の中ではリーダー的なポジションを務めており、実質メイド長。


・ロゼッタ

ノエインの屋敷で働くメイド。現時点で17歳。

おっとりした性格で、語尾を伸ばした喋り方が特徴。メイド3人の中で料理が最も上手く、食事作りを一手に引き受けている。

色々あってペンスのことが好きになり、周囲の協力も受けながら密かにアピールを続けた。最終的にはド直球に告白してペンスの愛を掴み取る。


・ザドレク

ノエインの所有する奴隷。虎人。現時点で30代半ば。

ノエインのもとで肉体労働を行う奴隷たちのまとめ役を務めている。出身が獣人の族長の家系なので、管理職としての能力も高い。領主所有農地や公共施設の管理にノエイン自身があまり労力を割かなくていいのはこのザドレクのおかげだったりする。

獣人奴隷でありながら自分を厚遇してくれるノエインへの忠誠心は非常に高い。


・ヘンリク

ノエインに雇われている使用人。現時点で20代前半。

厩番として領主所有の馬たちの世話をしたり、ノエインが士爵家の馬車で外出する際は御者を務めたりしている。

田舎の農村の出身で、農耕馬や荷運び用の馬をずっと扱っていたため、元傭兵の従士たちに次いで馬の扱いに長けている。馬車を操縦する腕なら従士たちにも勝る。

訛りの強い話し方や、前歯が一本欠けた笑顔が印象的で、愛嬌がある青年。


・リック

アールクヴィスト領軍の兵士。現時点で20代半ば。

元々はエドガーと同じ開拓村の出身で農民だったが、屈強な体格を活かして領周辺の見回りや魔物狩りを手伝うようになり、現在では専業の軍人となっている。

古参の領民でもあることから領軍兵士たちのまとめ役も務めており、またバリスタ射手としても優れた能力を発揮している。

若いうちに結婚しており、アールクヴィスト領に移住する前から妻と息子がいる。


・ダント

アールクヴィスト領軍の兵士。現時点で20代半ば。

元々はエドガーと同じ開拓村の出身で農民だったが、リックとともにラドレーを手伝って領周辺の見回りや魔物狩りを手伝うようになり、現在では専業の軍人となっている。

古参の領民でもあることから領軍兵士たちのまとめ役も務めており、武家の従士たちと一般兵士たちを繋ぐ兵士長のようなポジションになりつつある。

作中では描写はないが、最近になって同世代の女性と結婚した。また、ラドレーの妻のジーナは実の姉。


・ジーナ

ラドレーの妻でダントの姉。現時点で30歳前後。

仕事で弟ダントの面倒をよく見てくれていたラドレーと接するうちに、彼の誠実な性格に惚れて自分からアプローチをかけて結婚した。明るく器量よしの良妻。少しぽっちゃり系。

ラドレーとの子どもを妊娠中。


・ミシェル

バートの妻。現時点で20代前半。

ケーニッツ子爵領のレトヴィク出身。父親の営む料理屋で店員として働いていたが、店を訪れたバートに惚れられてプロポーズされ、交際0日で結婚を果たした。

飛び抜けた美人ではないが、おしとやかで優しい性格。


・フィリップ

商人。スキナー商会の商会長。現時点で20代後半。

もともとは零細の行商人だったが、新興の領地であるアールクヴィスト領にいち早く通って商売を行うなど、先見の明と行動力を持っていた。

ケーニッツ子爵に金を握らされてアールクヴィスト領の発展具合を報告するスパイのようなことをしていたが、行商人としてアールクヴィスト領民の生活にもしっかりと貢献していたのでノエインからは見逃されていた。

盗賊騒動をきっかけに商人としての覚悟と根性を認められ、ノエインから店舗を与えられてアールクヴィスト士爵家の御用商人となり、自身の商会を設立。鉱山資源の領外への販売を任されるなど、大きな利益を上げて日に日に商会を成長させている。


・ドミトリ

大工。犬系の獣人。現時点で40代後半。

もともとレトヴィクの建設業商会で親方を務めており、ノエインの依頼を受けてアールクヴィスト領で家屋建設を担っていた。

獣人という種族の不利もあってレトヴィクではこれ以上の出世は見込めないと考え、アールクヴィスト領に移住して自身の建設業商会を立ち上げた。

移住当初は数人の弟子を抱えているだけだったが、今では多くの労働者を抱え、また農閑期には手の空いている農民たちを雇い入れ、移民が増え続けるアールクヴィスト領のために凄まじい勢いで家を建て続けている。


・ヴィクター

鉱山技師。ドワーフ。現時点で80歳以上(ドワーフは普人よりも長命な種族)。

もともとはレトヴィクの大商会で技師として働いていたが、アールクヴィスト領の鉱山開発に顧問として雇われたことをきっかけに、独立して自身の商会を設立したいと考えるようになった。

その後、ノエインが鉱山開発事業を拡大させる際に再び声をかけられ、子飼いの職人集団や鉱山夫を連れて正式に移住。商会を立ち上げ、ノエインに雇われて鉱山村で採掘事業を指揮している。

鉱山村が自身の商会を軸に発展していることもあり、村の代表者のような役割も務めている。

ドワーフらしいワイルドな風貌とは裏腹に礼儀正しく丁寧な性格で、言葉遣いもとても穏やか。


・ダフネ・アレッサンドリ

魔道具職人。現時点で30代前半。

もともと王国南東部のキヴィレフト伯爵領で「アレッサンドリ魔道具工房」という工房を経営しており、女性職人一人の小規模な工房ながら丁寧な仕事が好評を博していた。その評判を聞きつけたノエインから依頼され、二体のゴーレムを作った。

最近になってキヴィレフト伯爵が無計画に外国の魔道具商会を領に呼び込んだため、工房の経営が立ち行かなくなり、ノエインのもとで働こうとアールクヴィスト領に移住してきた。

移住後は領民への販売用に生活用の魔道具も作りつつ、ノエインから「爆炎矢」の製造を依頼されるなど領の軍事力強化にも貢献している。

キヴィレフト伯爵に仕える下級貴族の縁戚。


・セルファース

老医師。現時点で90歳以上(クォーターエルフなので100年以上の寿命を持つ)。

レトヴィクで診療所を長年経営していた。その際、当時医者のいなかったアールクヴィスト領に呼ばれて盗賊討伐で怪我を負った領民を治療したり、熱病を患ったノエインを診たりしている。

それらの出来事がきっかけでアールクヴィスト領を気に入り、レトヴィクの診療所を弟子に受け継がせた後に移住し、領の発展を見届けつつ余生を過ごしている。また、領内唯一の医師としても働いている。


・リリス

医師見習い。現時点で14歳。

クラーラの運営する学校の一期生で、授業の一環としてセルファースから医学の基礎を学んだことで興味を持つ。女性医師は一般的でないため父親から反対されるも、ノエインの助力もあって父を説得し、現在は医師見習いとしてセルファースの助手を務めている。

女性である彼女が医師の道に進んだことが、性別や出自、身分などによって将来を制限されがちな王国内の気風をアールクヴィスト領内で取り払うきっかけになりつつある。


・ハセル

司祭。現時点で20代半ば。

ロードベルク王国の国教であるミレオン聖教の若き司祭で、アールクヴィスト領に教会を設立し、運営するために妻や修道女とともに移住してきた。

王国では政教分離が成され、宗教勢力の力は強くないので、彼も領内では「祝福の儀」をはじめとした儀式を執り行ったり、熱心な信者のために祈りの場を設けたりするのが主な役割。

聖教会の秘伝技術によって作られた薬品「天使の蜜」を多額の寄付と引き換えにノエインに提供するなど、領の軍事力強化にも一定の協力をしている。というかさせられている。




〇レトヴィクの人々


・アルノルド・ケーニッツ

ケーニッツ子爵家の当主。現時点で46歳。

アールクヴィスト領の東隣にあるケーニッツ子爵領を治めている。

後世に悪く語られたくないという気持ちから善政に努めており、それなりに有能な領主と評されている。一方で、工作活動によって盗賊団をアールクヴィスト領に受け流して自領の被害を抑えようとするなど、したたかな一面もある。

ノエインの悪知恵を何度か目の当たりにしたことで、自領の利益のためにも全面的にアールクヴィスト士爵家の味方をする道を選んだ。その意思表明も兼ねて自身の四女であるクラーラをノエインの結婚相手に勧めており、今では義理の息子となったノエインと友好的な関係を築けている。


・エレオノール・ケーニッツ

アルノルド・ケーニッツ子爵の妻。現時点で43歳。

上級貴族家の夫人にふさわしい華やかさと落ち着きを持った女性で、30代前半にも見える美貌を誇る。


・フレデリック・ケーニッツ

アルノルド・ケーニッツ子爵の長男で、子爵家の跡継ぎ。現時点で24歳。

次期当主として能力的・精神的に自身を鍛えるため、成人前から王国軍に入って軍務に励んできた。軍人としては優秀で、王国軍でも最精鋭とされる第一軍団に配属されるまでに至り、来年には退役してケーニッツ領に戻ってくる予定。

真面目な優等生タイプで、次期領主として人格や能力は申し分なしと両親からも思われている。

ランセル王国との戦争を通じてノエインとは戦友になった。ノエインにとっては義理の兄にあたる。


・ベネディクト・マイルズ

商人。マイルズ商会の商会長。現時点で50代前半。

ケーニッツ子爵領では最大級、王国北西部でも指折りの大商会のトップに立つ人物。レトヴィクの本店のみならず、王国北西部から北東部にかけていくつもの支店を持っている。ケーニッツ子爵家にとっては御用商人でもある。

そこらの下級貴族を上回る経済力や人脈を持っており、仕事上の都合がいいことから商会名を姓として名乗っている。

フィリップのスキナー商会とは鉱山資源の取引を行っており、またアールクヴィスト士爵家から直接の依頼を受けることもあったりと、アールクヴィスト領との繋がりが深い。


・イライザ

商人。アンナの母。現時点で40代前半。

レトヴィクで中規模の食料品店を営んでおり、主に庶民を相手に商売をしている。

アールクヴィスト領が自給自足できるようになる前は、ノエインは彼女の店から食糧を買っていた。娘のアンナがアールクヴィスト領に移住したいと言い出した際は心配する様子を見せるも、最終的には娘の意思を尊重して送り出した。

現在はアールクヴィスト領が戦略物資として塩を大量備蓄するための取引を持ちかけられ、これに応じて大金を稼いでいる。

快活な性格で、夫を早くに亡くしてからも店をしっかりと切り盛りするなど、商売人としても優秀。


・マルコ

商人。アンナの兄でイライザの息子。現時点で20代前半。

母イライザの店を手伝いながら、いずれ店を継ぐために経験を積んでいる。

真面目な性格で商売人としての能力も申し分なし。




〇北西部閥の貴族たち


・ジークフリート・ベヒトルスハイム

ベヒトルスハイム侯爵家の当主。現時点で50代前半。

王国北西部の貴族閥をまとめる盟主で、ケーニッツ子爵領の東に領地を持つ。領の人口は北西部で最も多く、領軍も軍団規模の人数を抱えている。領都ベヒトリアは北西部最大、国内でも屈指の都市。

年齢を感じさせない覇気を纏った偉丈夫で、地方貴族閥の盟主にふさわしい洞察力や判断力も持っている。

また、無名の弱小貴族だったノエインの持ち込んだクロスボウやジャガイモの有用性を認め、派閥内に普及させるなど、新しいものを迷いなく取り入れる柔軟さも持ち合わせる。


・エドムント・マルツェル

マルツェル伯爵家の当主。現時点で40代半ば。

王国北東部との境界に領地を構え、利益を巡って何かと対立しがちな北東部閥とにらみ合う役割を担う。領地の規模は北西部ではベヒトルスハイム侯爵領に次いで大きく、派閥のナンバー2の立ち位置にいる。

バリバリの武闘派として知られ、性格はやや保守的。そのためノエインの有能さを頭では認めつつも、その独特の思考や価値観、獣人奴隷をいつも引き連れるという振る舞いが感情的にはものすごく気にくわない。


・アントン・シュヴァロフ

シュヴァロフ伯爵家の当主。現時点で60代前半。

王国中央部との境界に領地を構える、北西部閥のナンバー3。北西部と中央部を繋ぐ主要街道が領内を通っており、経済的な要所として栄えている。

王家をはじめとした国の中央とバランスをとりつつ北西部の利益を確保するために活躍してきた老獪な貴族で、経済的な影響力では派閥二番手のマルツェル伯爵に勝る。

穏やかな好々爺に見えるが、その笑顔の中に底知れない深い思考を抱えている……という風にノエインの目には映っている。


・トビアス・オッゴレン

オッゴレン男爵家の当主。現時点で30代後半。

王国北西部の中でも南寄りの位置に領地を持ち、平地が多いことからそれなりの穀倉地帯として一定の価値を持っている。

派閥の中ではその他大勢に近い存在だが、獣人好きでいつもお気に入りの猫人奴隷を連れている変わり者であるため、マチルダを常に引き連れるノエインとは何かと気が合うことが多い。ノエインにとっては数少ない友人と呼べる相手。

※設定上のオッゴレン男爵領の位置を少し変更(当初よりもっと南寄りに)したため、それに伴って第69話「晩餐会②」の本文を一部修正しました。




〇王族・他派閥の貴族


・オスカー・ロードベルク3世

ロードベルク王国の現国王。在位8年目。現時点で32歳。

先代国王が病で早逝したため、若くして王位に就いた。勇猛さ・知的さ・気品とどの点を見ても一国の王として申し分ないが、若いが故に経験不足な一面もある。

ベヒトルスハイム侯爵とは自身が王子だった頃から社交の場などで交流があり、本人曰く「小うるさい親戚のジジイのようなもの」。


・ラグナル・ブルクハルト伯爵

軍務大臣。現時点で40代半ば。

官僚として王家に仕える、いわゆる宮廷伯。

武家の名門であるブルクハルト伯爵家の現当主。大臣職に就く前は王国軍で経験を積んだ叩き上げの秀才であり、軍人時代は最精鋭である第一軍団の軍団長を務めるまでに出世した。

大臣となってからも、これまでの経験を活かしつつ王家と現場双方に配慮して巧みに王国軍を管理している。


・ガルドウィン侯爵

王国南西部の貴族閥を束ねる大貴族。

南方大陸との貿易で栄える南西部の盟主ということもあり、ベヒトルスハイム侯爵に勝る経済力・軍事力を有していたが、領地が西のランセル王国との国境に接していることもあり、紛争の悪影響を直接的に受けている。

北西部閥と南西部閥は伝統的に仲が悪いが、自身はベヒトルスハイム侯爵と一定の交流を持っており、派閥同士が決定的に対立することがないよう盟主同士でバランスをとっている。


・マクシミリアン・キヴィレフト伯爵

キヴィレフト伯爵家の現当主。王国南東部で海に面する大領を有する。

軍事的な力はそれほどでもないものの、領都に大きな港を保有していることから、南方大陸のベトゥミア共和国との貿易で栄えて圧倒的な経済力を誇っている。南東部閥ではナンバー2の立場にいる。


マクシミリアン個人は優秀・善良な領主貴族とは言い難く、他貴族からの評判も良くない。傘下の豪商を優遇してその対価として多額の賄賂を受け取り、私欲を肥やしている。

しかし、自領が決定的に崩壊しないよう最低限のバランスを取るだけの知恵はあり、その経済力で派閥にも大きく貢献しているので大々的に非難はされていない。


若いときの過ちで、正妻や嫡子を持つ前に庶子(ノエイン)を設けるという失態を犯しており、その醜聞が風化するよう苦心してきた。

庶子であるノエインにアールクヴィスト領を押し付けて縁を切ったのは貴族社会でも知る人ぞ知る話であり、ノエイン・アールクヴィストがマクシミリアンの子であることはごく一部の貴族しか知らない。



・・・・・



※王国各地の経済規模は、王都を含む王国中央部が40%、南東部が20%、南西部が17%、北東部が13%、北西部が10%くらいのバランスです。そのため南東部のナンバー2であるキヴィレフト伯爵家は、経済力だけで言えば北西部盟主のベヒトルスハイム侯爵家を上回るほど強かったりします。


※経済バランスは上記の通りですが、工業技術は鉱山や職人の多い北部の方が発展していたり、人口的には王国中央部が30%くらいの割合だったり、軍事力では王国軍を擁する中央部が他地域を圧倒していたりと、他の要素は必ずしも比例しません。


※キヴィレフト伯爵家は経済的に国内有数の大領である上に海洋貿易のぶっといパイプを持っているので、ここを敵に回さないためにも、マクシミリアンとノエインの関係を知っていても面白半分に広めようとする貴族はいません。

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