ジェムソン スタンダード

「酒の大沢」

 から川沿いの赤黄色のアーチになった道を真っすぐに進む。すると、段々と大きな建物が見えてくる。そこはこの町の中学校だ。彼女が通っている中学校でもある。

 その彼女は、毎日のように「酒の大沢」に足を運んでいる。いや、『いた』が正しい。

ある日を境に彼女は店に来なくなった。そのきっかけは間違いなく僕だ。

僕があんなこと……あんな酷いことを言わなければ、こんなことにならなかったと思う。

あの時の僕は本当にどうかしていたのだ。自分が追い詰められていたからといって、人に当たっていいわけがない。でも、器がものすごく小さい僕は彼女に当たってしまった。

彼女は、おかしくなっていた僕にもいつも通り接しようとしてくれていたのに…………

出来ることなら、その時の僕を殴りつけてやりたいくらいだ。

でも、そんなことは絶対に出来ない。

失ってからその大切さが分かると良く言われる。まさに、そうだ。

僕は彼女が店に、来なくなってものすごく寂しく思っている。

『お兄さん』って親し気に話しかけてくれる彼女との時間が楽しかった。

彼女のどうでもない話を聞いている時間が好きだった。

 その時間を取り戻すにはどうするか…簡単な話だ。

彼女に誠心誠意謝罪する。それに限る。

という結論はすぐに出ていた。でも、肝心の彼女に会う方法がなかった。

 僕は、彼女の家を知らない。携帯の番号も。だから、僕から彼女へと連絡を入れる手段は一切ないのだ。だから、彼女の方から店に来てくれないかと淡い期待を抱いていた。

でも、彼女は来ない。一週間以上待ったが来ないのだ。これ以上待っても同じだろう。

 なら、僕がどうにかしないといけないんだ。

そう思って、彼女と接触する方法はないかと考えた。

そして、思いついたのが『彼女の学校の前で出待ちする』ということ。

 だから、僕は彼女の中学校に来たのだ。

天音から学校の終わるだいたいの時間を教えてもらえたので、その少し前から待っていればいつかは彼女に会えるだろう。校門の横にある石垣に腰を下ろして、待つことにする。

 僕を見て、彼女はどんな顔するだろうか…

怒った顔、悲しい顔、嫌そうな顔…どれも見たくない。

 にぱっとした笑顔それが良く似合う彼女。

彼女の太陽のような笑顔をまた見たい。

でもあんなことをした僕に、彼女はそんな笑顔を向けてくれるのだろうか…


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