ランブルスコ セッコ ⑤
「無理なんですかね?」
バッサリと否定されてしまった。
「いや、無理ってことは無いよ。私は実際に働きながら通っているわけだしね」
「それじゃあ…」
「じゃあ、色々問題点をあげるわね。まず、休みがなくなるわ。普通に朝から晩まで働いて、帰宅したら勉強する。毎日がその繰り返しなの。さらに言うと、残業が発生したら勉強の時間は取れなくなって、どんどん勉強が遅れていく。その遅れを取り戻すために休みの日を全部使わざるを得なくなる。それでも大丈夫?」
その問題は今僕も直面している。昼間に数時間貰って勉強しているが、お盆は忙しすぎて勉強している暇なんかなかった。今、僕がしている勉強は全部復習。忘れていた勉強を思い出しているところ。だから、短い時間でも何とかなっている。でももし、新しい範囲を勉強することになったら…とてもじゃないが昼だけでは終わる気がしない。遅くまで勉強は必須だろう。
「次に、学校生活は楽しめないの。簡単な話、学校に通わずに自分で勉強しているのだから、みんなが経験している普通の学校生活は諦めないといけない。実際に私も思い描いていたような生活は出来てない。でも…」
「でも?」
「時間を見つけて軽音部に顔を出しているから、その時間は私にとっての学校生活なのかもしれないわね」
成美と川出が知り合いだった理由は、どうやら同じ部活に所属しているからのようだ。
共通の趣味が年の差を超えて二人の仲を作ったのだろう。
「川出さん、無理やり時間作って部活に来ますもんね~」
成美がたまに口を出してくる。でも、そのおかげか場の空気が重くなるのを防げている。
正直すごくありがたい。
「後でツケは来るのだけど…楽しいからついね…」
川出はコホンと咳払いすると話に戻る。
「いくらでも問題は出て来るけれど、聞きすぎても飽きるから次で最後にするわね。
世間体があんまりよくないのも問題点。通信制のことをよく知らない人に通信制の高校に通っていますって言っても、良い思いをしない人が多い。それは、仕事場でもそうなの。通信制の高校に通っていますとか、卒業していますって言うだけで、白い目で見られることが多々ある。それは先に知っておいたほうがいいかも」
自分も成美から、その話を聞いて驚いて見せた。さらに、今はないが悪いイメージも持っていた。他の人も知らないからこそ、あんまり良くない思いを抱いているのだと思う。
「鵜飼君はどうして働きながら、通いたいって思うの?」
「それは…」
今のところの理由はあの場所に居たいから、だけなのだ。
「お金の心配は?」
「たぶんどうにかなります…」
「そっか…私個人としてはお金の問題とかがないならやめたほうがいいと思う。けどさ、軽い気持ちで働きながら通いたいなんて言えないものね。君がやりたいと思う道なら進めば良いと思う。だけど、それはすぐにしないといけないことなのかよく考えたほうがいい。高校生活は今しかできないの。後で後悔してもそれは取り戻せないのよ。そのことをしっかりと心にとめておいたほうがいいわね」
彼女に何度も「やめたほうがいい」と言われ段々と頭が真っ白になっていく。そのせいか話の続きは頭にほどんど入ってこなかった。
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