キリン秋味 ③
「それで何かあったんです?」
機嫌を直してくれた、たまきが問いかけてきた。
「何かって?」
「お兄さんと天音さんの関係ですよ! 傍から見ても二人の関係がなんか変だってわかりますよ。喧嘩でもしたんです?」
「喧嘩ではないかな…」
周りから分かるくらいだから、自分でも何だかギクシャクしているのが分かっている。
いつもなら遠くにいても大声で、指示してきそうなのに今日は何かと伝言が多い。
僕自身、天音に言わないといけないことがあり、それを言えていない後ろめたさみたいなものがあってか、話しかけるのに少し気が引ける。
でも、それは僕の話だ。天音が話しかけてこない理由とは何なのだろうか?
「それで?」
「ああ、ごめん。えーっとね…」
「スクワットします?」
スクワット50回。実はまだ、有効なんです。
「いや、はっきり言うよ」
「お願いします」
「天音さんに言わないといけないことがあるんだ。別に悪いことしたとかじゃないんだけどね。
絶対に言わないといけないことなんだ。これからのことにかかわる大事なことだからさ」
「ふーん」
「でも、直接言おうとすると何故だか上手く話せないんだ…」
「なるほどです。内容までは深く問いませんが、その代わりに私が思ったことはっきり言いますけどいいですか?」
「お願い」
「気負いすぎですよ! いつものように気楽に話せばいいんですよ!」
「それが出来たら…」
「じゃあ、いつも通りの気軽な会話をして、その流れで話したらどうです?」
たまきの言う通り、大事な話だからしっかりとした時に話さないといけないと思いすぎていたのかもしれない。いつも通りの会話なら出来そうだし、いい考えだと思う。
「ありがとう。それやってみるよ」
「じゃあ、そろそろ私は帰りますね~」
「ごめんね。あんまり相手できなくて」
「いいですって。あっ、約束は絶対ですからね!」
「分かってるよ」
「それじゃあ、また!」
麦わら帽子をかぶって、楽しそうに首をユラユラさせながら彼女は帰っていった。
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