サントリー ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム

「酒の大沢」

は三日の休業日を終えてから、平常通り営業している。

 うだるような暑さ、ジトジトした湿気。

おかげで、キンキンに冷えたビールやチューハイを求めるお客さんが沢山来てくれている。

苦労して冷蔵庫用意した甲斐があるというものだ。

 冷えた酒目的の人だけでも沢山来ると言うのに、他の目的のお客さんが多く来ている。その目的は、『お中元』。

 地域によって変わるらしいが、この辺ではお盆に入る前までに届くようにお中元を送る。まだお盆まで数日あるが、余裕を持って送りたいのかここ数日お中元を頼むお客さんが押し寄せている。

「このファミリーセット10個くれ」

 今も常連のおじいちゃんの応対中。

 ちなみにファミリーセットとは、ビールとジュースが一緒になったギフト用のセットの事。

「お熨斗はお中元でいいですか?」

「それでいいよ」

「お名前はお入れしますか?」

「なくていい」

「畏まりました」

「お届けは今からですと、三日四日かかりますがよろしいですか?」

「盆までに届けばいいよ」

「では、お会計送料合わせまして〇〇〇〇〇円です」


 とまぁ、こんな感じでお中元の応対は聞くことが多い。

一つ聞き忘れるだけで、後々困ることになるから聞き漏らさないように手元にメモを置いているくらいだ。本当に面倒。

 でも、ここからがもっと面倒なんです!

 お客さんの波が落ち着くと同時に、先ほど売れたファミリーセットを包装台の横に持ってくる。そしたら、まず全部に熨斗を貼っていく。それが、終わると包装紙を広げて一つずつ包装していく。ただ包装するのではなく、いつもなら軽くしかテープ止めしない所を隙間なくテープで埋めていく。こんな風にする理由は、発送時に包装紙が破れてしまうのを防ぐため。

包装がびりびりになった贈り物を受け取ると嫌な気持ちになりそうだし、手は抜けない。

 次に送り状を書く。大体の人がExcelなどで住所や名前などを一覧にしてここに送ってと言ってくる。だから、それを全部手で書き写す必要があるのだ。雑にならないように集中して書き終え、それを包装したものに貼る。

 この作業を送らないといけない分だけ。今回なら10個やらないといけない。

 人に送るものだから雑に出来ないし、送り先を間違えないようにしないといけないし、包装中は普段取らないような姿勢をとるから腰が痛いし、包装紙で指のあちこちに怪我が出来るし、

辛い、辛い、辛い、辛~い。

「はぁ~ 早くお盆になってくれよ~」


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