バランタイン ファイネスト ②
何か考えながら仕事をすると痛い目を見るのは、この前兄のことで頭がいっぱいになって指を切ったことから身をもって知っている。だから、潔く相談することにした。
「天音さん、相談良いですか?」
配達に行く前の彼女を呼び止める。
「どうした?」
僕の真剣さが伝わったのか、配達の準備の手を止めて話を聞こうとしてくれる。
「あの、出来たらでいいんです。昼の休憩時間をもう少し貰えませんか?」
勉強がやばい状態であることに気が付いてから僕は色々考えてみた。
どうすれば前のように戻ることが出来るか。
答えは簡単だった。
勉強すればいいのだ。
でも、それをするための時間がない点に問題があると気がつく。
酒の大沢は夏の期間、朝8時から夜8時まで営業している。
単純計算12時間店に拘束されるのだ。いや、朝の準備や夜の片づけを考えたらもっと長くなるかもしれない。それを差し引いて、ついでに睡眠や食事、風呂、歯磨き、家事などの時間を差し引くを残された時間は1時間あればいいくらい。その時間を勉強に使うつもりなのだが、それだけではあまりにも短すぎる。小学生ですら何時間も勉強しているのに、高校生である僕が一日一時間。足りるわけがない。手っ取り早く勉強時間を増やすために、睡眠を削ることも考えたが仕事の質が落ちてしまうのでダメ。今の状態ではどうやってもこれ以上時間を捻出できそうにないから、休憩時間を増やしてもらいそこで勉強するのがいいのではないかと思ったのだ。
「どれくらいの時間だ?」
すぐに一蹴されるだろうと思っていたが、どうやら検討してくれるようだ。
「昼食の後に二時間くらい…」
「どうしてだ?」
「それは…」
勉強が危機的状態にあることを天音に余さず伝える。
天音の反応は
「構わんよ」
あっさり許可が貰えてしまった。
「いいんですか?」
「勉強したいって理由なら止めやしないよ。その時間は私が店番すればいいさ。
そもそも、お前は休学しているだけでまだ学生の身なんだ。勉強は学生の一番の仕事だ。それが疎かになっていいわけがない。まぁ、無理せずに頑張れよ」
天音は僕の肩をポンと叩くと配達に出ていった。
数日後———
僕宛に大きな荷物が届いた。
送り主は母親。
家にある教科書や参考書を全て送ってもらったのだ。
これで、勉強の準備は出来た。時間も出来た。
あとは、続けるだけ!
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