赤玉スイートワイン ②
午後———
昼ご飯を終えた僕は店番をしながら、先ほど見つけた段ボールを開けていた。
冷蔵庫の方は…
あのあと痺れを切らした天音が倉庫に入ってきて、すぐに見つけた。
入口の近くにあったのだが、ほこりを被らないように段ボールを被せられていて、見た目からは段ボールの山にしか見えなかったのだ。
「どんだけ時間かけているんだよ」って文句言われたけど、そんなこと言うなら自分でやって欲しかった… まぁ、段ボールは違うだろうって高をくくっていた僕も悪いんだけど…
とまあ、これで冷蔵庫は用意できた訳だ。
今はレジの隣に置かれて、中を冷やし始めている。
そろそろ、ビールを入れてもいい頃だろう。
でも、それよりも倉庫で見つけた資料の方が気になる。
だから、冷蔵庫は置いておいて段ボールを開けることにしたのだ。
「うわ…」
段ボールを開けたら、沢山の埃が出てきた。
店の中でこれ以上広げるのは良くないと思い、急いで店の外に持っていく。
それから中にあるものを叩いて埃を落とす。
中に入っていたのは、B5のノートが10冊くらいと酒に関する本。
「こんなのがあるなら見せてくれたらよかったのに…」
軽い文句をたれつつ、埃を落とし切った物から順番に中に入れる。
一息ついて、ようやく中を見ようと思っていると
チーン
間が悪いことにお客さんが来た。
お客さんの前で本なんて読んでいたら、句言われそうだし、また後にしたほうがよさそうだ。
久しぶりの晴れだからか、お客さんは中々途切れなかった。
一組終わっても、次の一組。
それが永遠と続いて、いつまでも資料を見ることが出来ていない。
早く暇にならないかなと思っていると
チーン
「またか…」
小声で悪態をつく。
それから、入口に目をやるとショートボブでセーラー服の女の子がそこにいた。
「お兄さん、来ましたよ~」
友達の家に遊びに来るかのような気軽な感じ。
今は他にお客さんがいないからいいけれど…
「だから、来るなら着替えてよ!」
小姑みたいにクドクド言っているのに、いつまで経ってもセーラー服で店に来る。
「はーい、分かっていますよ~」
いや、昨日の同じようなこと言っていたよね?
いい加減怒るよ!
「そんな事より、ここの問題教えてくださいよ~」
最初は一言あったが、最近は当たり前であるかのように、レジの後ろの包装台の前に置いてある椅子に腰を掛ける。それから、教科書を広げ出す。
開かれた教科書は数学。どうやら因数分解で聞きたいところがあるみたい。
「どこ?」
「ここです?」
「ああ、そこの問題は—————」
一応勉強はしっかりしていたから、中学の内容なら問題なく教えられている。
だから、こんな風に家庭教師みたいなことをたまにしている。
「なるほど~」
「ここも同じ感じだからやってみな」
「はーい」
たまきはノートに食いつき始める。
たまき以外は誰もいないし、丁度いいと思い先ほど隅に置いたノートを一冊拾い上げる。
そして、適当に開いてみる。
何かの写真が貼られているページが開かれた。
「えっ?」
お酒の資料を見ているはずなのに、そこに貼られた写真は———
「お兄さんどうしたんです?」
僕が変な声を上げたせいか、たまきがこちらに目をやってきた。
まずい…これを見られたら誤解される…
急いでノートを閉じようとするが、遅かった。
たまきは手をノートに滑り込まして、僕が閉じるのを妨害したのだ。
さらに、しゅっとノートを自分の方へ持って行ってしまったのだ。
たまきはノートを見ると表情を曇らせる。
蔑むような目線を送ってくる。
はぁー、言わんこっちゃない。
「お兄さん…えっち…」
これだけは言わせてほしい。
「たまき誤解だよ~」
彼女には言い訳にしか聞こえなかったのか
「勉強している横でこんなもの見て、お兄さん本当にえっち…ですね」
彼女がこんな風に言う理由は明白だ。
だって、僕が開いたページに載っていたのは
『ヌードの女性がワインを片手に持っている写真』
であったからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます