キリンクラシックラガー ②
「もしかして…ゆうきくん?」
どこかで見たことがある男の子。
以前のようにスモックに黄色い帽子でなくて、最近はやっているアニメを模した市松模様のキャラクター物のシャツを着ている。
「うん! お兄ちゃんこんにちは」
挨拶出来て偉い!って頭をわしゃわしゃしたくなる衝動を抑える。
アー、カワイイナー
「こんにちは。今日は何しに来たのかな?」
この男の子、さとうゆうき君は単身赴任をすることになったお父さんのために、シャンパンを買おうとうちの店に訪れたことがあった。
あの時も確かこんな風に一人で…
「あっ…」
あの時の母親の顔を思い出す。
心配そうにこの子を探しまわっていたであろうあの顔を。
「ゆうきくん、ここに来ることはお母さんに伝えてあるの?」
「いったよ!」
「そっか。偉いね~」
一瞬目をそらしたような気がするがこんなにも元気のいい返事。たぶん気のせいだろうけど、一応、天音さんに連絡したほうがいいよな?
「ちょっと待ってね~」
「うん!」
すぐに天音に電話をかけ、ゆうきくんのことを伝えると、母親に連絡を入れてくれることになった。これで、一安心。心置きなくこの子の相手が出来る。
「待たせてごめんね。それで今日は何しに来たの?」
この子はあの一件の後、一度も店に来ていない。実に四か月ぶりだ。
四か月も経つと以前よりも、応対がはっきりしてきたように思える。
背もだいぶ伸びて、もう立派なお兄ちゃんだ。
たぶん今年から小学校に行っているはずだし、時の流れを感じさせられる。
話を戻すが、四か月ぶりに店に来たということは、何かしらの目的があるような気がするのだ。
「お父さんが帰ってくるの!」
子供らしい無邪気な笑顔。
以前に浮かべていた悲しい顔でなくて良かった。どうにかこの子なりにお父さんが遠くにいても頑張れているのだろう。
うん、偉い! 偉い!
じゃなくて、久しぶりにお父さんが帰ってくるということは、またお父さんのために何か買ってあげようとしているのだろう。
「良かったね。今日は、何を探しに来たのかな?」
以前は『シュワシュワの、特別なジュース』こと、シャンパンのモエ・ド・シャンドンを探していたのだ。今回も同じものを買いに来たのだろうか。でも、あれは…
「ピーマンみたいなシュワシュワ欲しいの!」
子供特有の独特な表現。
可愛らしくていいと思うけど…
世の中の父母は苦労しているんだろうな。
というか、そもそもピーマンのお酒なんてあるの?
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