贅沢搾り
「酒の大沢」
にある僕(鵜飼大輔)が管理している棚に新しい仲間が増えた。
その名も『贅沢搾り』
ほろよいとキリン・ザ・ストロングの売り上げが最近伸びてきたこともあり、
もっと売り上げを伸ばせないか悩んだ末に、新顔を投入することにしたのだ。
実際に果物をまるごとかじったような味わいが楽しめる……らしい。
女性人気があるようだからこれを選んだ。
新顔を入れるために、棚の整理も行ったから、贅沢搾り以外にも何種類かは増やせそうだ。
まぁ、一気に増やすのは怖いから、少しずつ、少しずつ。
完全にチューハイ棚と化している気がするが、他のお酒は難しそうだから当分は
チューハイ一本で!
最近の客入りはそこそこ良い。
花見最盛期よりは落ちたものの、若い常連さんが付き始めた。
そのおかげか、暇すぎもせず忙しすぎもせず一日を過ごせている。
そんな順風満帆に思える「酒の大沢」で少し問題が発生している。
贅沢搾りを並べた日かから起きるようになったのだ。
チーン
「いらっしゃいませ」
あっ! また来た!
店に入ってきたのは身長が150cmに満たないくらい小柄な女性。
天音のような長い髪ではなく、ショートボブと言った感じの髪型の女性。
いや、女性ではなく女の子が正しい気がする。
格好は頑張って大人らしくしているのだが、仕草や顔立ちに幼さを感じるのだ。
たぶん僕より幼いはず。下手したら中学生かもしれない。
女の子は周りの目をやたらと気にしていたり、棚の陰に隠れようとしたり、他にお客さんが来ると逃げるように店を出て行ったりと怪しい行動を頻繁にとる。
だから、最近ではその女の子が店に入ってきたら目を離さないようにしている。
万引きとか怖いからね。
現に今もそわそわしながら、棚にある贅沢搾りを眺めている。
例え数百円でも万引きは犯罪だ。
見逃してなるものか!
と思いながら、女性に目をやっていると
チーン
「いらっしゃいませ」
新しいお客さんがきた。
すると、さっきまでチューハイを見ていた女の子は一目散に棚の陰に隠れ、入ってきたお客さんが奥へ行くと、颯爽と店を出ていった。
こんな光景が何日か続いている。
少しも気が休まらないから、そろそろ声をかけてみようかな。
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