ワンカップ大関 ②
段々と日が沈み空は橙色。
カーカーと合掌を始めるカラスたち。
近くの公園でキャッキャ遊んでいた子供の声が聞こえなくなってきた。
これでも長くなったのだろうが、それでもまだ日は短い。
そろそろ、店じまいか。そんな風に考えながらぼーっと冬空を眺めていると、店の奥から声をかけられる。
「最近、ワンカップの減りが早いな」
配達から帰った天音が、次に仕入れるものを決めるために売れた商品を確認しているのだ。
「毎日、一個買っていくお兄さんがいるんですよ」
「へぇー。お兄さんってことは若いのか?」
「はい。見た目はお世辞にも若々しくはないんですが……顔立ちが20代にくらいに見えるんですよね」
「珍しいな」
「そもそも、お客さんが珍しいですよね」
「悪かったな。暇な店で!」
「そういう意味では……」」
天音は少し、機嫌悪そうに答えてきた。
彼女なら笑い飛ばしてくれるだろうと思っていたが、どうやら彼女なりに客の少なさに思うところがあるようだ。
これ以上、深堀しても地雷を踏みぬくだけだから他の話を振ることにする。
「そういえば、天音さんおいくつなんですか?」
女性に年齢を聞くのがタブーなのは勿論知っている。
でも、色々と大雑把な彼女なら気にしないのでは思ったのだ。
だが————————
大きな地雷だったようだ。
トーン!
いきなり額に痛みが走る。
目の前には、発射済みのデコピンがある。
「いいか、覚えておけ。女性に年齢を聞いたらこうなるってな」
あきれ半分、怒り半分といった不機嫌そうな表情だ。
下手なこと言ったら殺されかねない。
「すみません……気を付けます。どうかご容赦を~」
彼女は僕の安い謝罪に「はぁ」とため息をつくと母屋のほうへ行ってしまった。
『教訓、どんな女性でも年を聞いたらダメ!』
額に残る痛みを心にとめて、もうしない。と固い決意をする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます