四月五日

「これ、見える?」

 灰色のネズミは手のひらを差し出したけれど、私には何も載っていないように見えた。

 私が首を振ると、彼は白い紙を机に置き、その上で手のひらを返した。軽い音がしたから、私には見えない何かがそこにはあるのだろう。

「影をつけたら、輪郭が浮き上がると思うんだ」

 灰色のネズミは私に鉛筆を持たせる。

「え、影だって見えないけど?」

 私がそう言うと、彼はひどく驚いた様子で何度も確認したあと、残念そうに紙を片付けてしまい、結局それが何だったのか私にはわからないままだ。

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