死をもって制するならば。

荒川 麻衣

第1話 墓場。

舞台。何もなく、真っ黒である。


関西弁の男「なんやこれ」

標準語の男、十字架を出して、

標準語の男「墓場つくってんの。禁じられた遊び」

関西弁の男「墓場ぁ?なんでまた」

標準語の男「冗談キッツイなぁ。今年。2020年、どんだけ公演、ライブ飛んだか数えきれるか?

 チケットサイトのぞいても、払い戻しの案内ばっか。

 右向いても左向いても中止、中止の連呼!

 走り出した列車は止まらないのに、

 無限列車のように人は金ばかり見てる。

 札束!札束にむらがり、国家は金を出さず死者を増やす!」

関西弁の男「なにがいいたい?」

標準語の男「落語が戦争で禁止された時に、落語塚をかつての偉人たちは作った。

昭和の、ちいさなおちょこぐらいの器でもそんなことをしたんだよ。

 かつての江戸には、粋があった。

 だから、あちこちで女がよがってイって子供がぎょうさん生まれよる。


 今は粋がないから女がよがらない。


 粋がないからいけないんだよ」

爪にマニキュアを塗りながら。


関西弁の男「それで」


標準語の男「道頓堀の下には死体が埋まっているって知ってるか」


関西弁の男「当たり前の話しよる」


標準語の男「あそこに手を合わせたことは」


関西弁の男「ないな」


標準語の男「ない?」


関西弁の男「暗くなるから。

もう、心斎橋の舞台に立たない人、消えた人、数えるのやめた」


標準語の男「ああ、アイドルグループの」


関西弁の男「ピュアボーイズより俺らのほうがいい線走ってた」


標準語の男「でも芸能界は運だ。東京に住んでいても一生スカウトされないで終わる子はゴロゴロいるし」


関西弁の男「表舞台に立てん人ぎょーさんおるし」


標準語の男「で。どうする?」


関西弁の男「なに?」


標準語の男「やっぱ、神道方式、仏式、儒式、キリスト式、いろいろあるんだけど、創価の人に失礼じゃん。

無宗教ってどうやるの?」


関西弁の男「連絡しとく」


スマートフォンを取り出す男。

標準語の男「誰?」


関西弁の男「俺だ。折原だけど。

そうです。借りならもう返したじゃないですか」


標準語の男「モリアーティ」


関西弁の男「そ。モリアーティ教授のお出ましだ」

舞台、溶暗、からの暗転。

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