エピソード51-18

ポケクリバトル会場 13:30時――


「さぁ! 4グループ同時の予選の後半戦が始まりました!」



「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」



 予選の後半戦が始まった。

 画面を見ながら、ユズルは達也に聞いた。


「C-1とC-4、どっちが勝つと思う?」

「そうだなぁ。パッと見C-4、かな?」


 蘭子は二人に言い放った。


「どっちが勝ったってやる事は同じだ! そいつらに勝つ!」


 その様子に、達也たちは期待を持ちながら蘭子に聞いた。


「ほぉ……頼もしいね、お蘭」

「ひょっとして、必勝法とか思いついちゃった、とか?」


 達也たちの態度に、鼻で笑う蘭子。


「フッ。必勝法? そんなもんは無ぇよ。為せば成るってな!」

 

 『決まった!』とばかりに、蘭子はドヤ顔で言い放った。


「はぁ……まさかのノープラン。期待した俺が間違ってたわ……」

「結局、当たって砕けろっていう事?」

「そうだお静! わかってんじゃねぇか!」

「お蘭さん、この格好の時はユズルでお願い……」

「そうだったな! 悪りぃ」


 そのやり取りを見て、素子はふと思い出し、蘭子に聞いた。


「でも蘭ちゃん? さっき『策はある』って言ってたよね?」

「ん? まぁな。さっき先輩が言ってた、『ブルーアイズ対策』の対策は考えてる」

「何だそりゃ?」


 先程の予選前半戦で、蘭子がブルーアイズ・レッドドラゴンを起用した事で、次以降の対戦において、炎系ドラゴンに対応できるポケクリを繰り出す等の対策を講じる可能性を素子は指摘した。


「恐らく、ウチのチームの最強の『推しクリ』はブルーアイズだと思ってる。そこを利用する!」

「って事は、ブルーアイズを引っ込めて、他の『推しクリ』を投入するのか?」


 通常なら炎には水や岩、ドラゴンにはフェアリーを充てる事を思いつくだろう。

 また、ドラゴン同士を戦わせる事も十分考えられる。


「ブルーアイズは連投。『推しクリ』を増やすのは無し」

「って事は、さっきと同じ?」

「いや、他のポケクリを見直す。つまりだな……」


 蘭子は、考察を混ぜながら、決勝までの道筋を説明した。


「と言う筋書きだ。どうだ?」

「おもしれぇ! そいつは傑作だ!」

「成程。蘭ちゃん、策士ですね……えげつないです。ムフフフ」

「という事で、頼りにしてるぜ? お静!」

「……だから、今はユズルだってば……」


 そう言って意味深な笑みをこぼしている蘭子から、ユズルはかなりのプレッシャーを感じていた。




              ◆ ◆ ◆ ◆




ワタルの塔 2階 応接室―― 


 レヴィたち一行に、後からココナとジルが参加する事となった。


「改めて、作戦を聞こう」 

「了解。それでは説明します」


 レヴィは一同に今回の作戦を説明した。

 主な内容は、


 ・このメンバーが乗り込む事は、リリィ以外は知らない。

 ・軍諜報部ご用達のアイテムを使い、『量産型モブ子』としてイベントに潜入する。

 ・アイテムを過信せず、常に警戒は怠らない事。

 ・作戦終了後、塔にて反省会を行う。


 以上であった。


「神父様? 夕のおつとめはサボるおつもりで?」


 ルリとココナは、あの学園の卒業生である為、当然ジルとの面識はあった。


「ミス・トウドウ、その辺はぬかり無く。『ある方』にお願い致しましたので」

「ある方? どなたでしょうか?」

「大方、寮長辺りに頼んだのであろう? 恐れ知らずにも程がある」


 ココナは在学中のエスメラルダの記憶にゾッとした。


「ご心配なく、ミス・リュウザキ、ローレンツ様は二つ返事で快く引き受けて下さいましたよ?」

「あのカタブツがか? ついにモウロクしたか……」

「とんでもない! むしろ若返っていますね。身も心も」


「「はぁ!?」」


 ジルの言っている事が全く理解出来ない卒業生たち。


「機会がありましたら、お会いしてごらんなさい。驚きますよ?」


 レヴィが手をポンと叩き、一同に告げた。


「はいはい! それではメイクアップを始めます!」


「「「了解!」」」




              ◆ ◆ ◆ ◆




献血カー内 13:35時――


 VIP用のソファーやテーブルが置かれた一角で、『ポケクリバトル団体戦』の生中継を見ている睦美たち。

 グループ予選の後半戦が終わった所だった。

 左京はカナメに聞いた。


「カナメ先輩、今の所波乱の様なものは起こっていませんね?」

「ああ。なかなか尻尾を出さんなぁ? 他のチーム」


 右京がウキウキしながら割り込んで来た。


「でもでもぉ、強いて言えばユズル様のチーム、最強っぽいですよね?」

「蘭ちゃんの思い切った采配が当たったんやろな。いきなりブルーアイズ出して、ド肝抜かれたんやろ」

「このまま、優勝街道まっしぐら、ならイイんですけどね」


 浮かれムードの一同に、睦美は横やりを入れた。


「不気味だな……手の内がわからん以上、楽観視は出来んよ」 




              ◆ ◆ ◆ ◆




ポケクリバトル会場 13:40時――


「さぁて! 次の試合で、ベスト4、グループ代表が決まりまぁーす!」


「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」


 予選の後半が終わり、グループ代表戦のカードが出そろった。


 グループA A-1対A-3  

 グループB B-2対B-4

 グループC C-2対C-4

 グループD D-2対D-3


 巨大スクリーンに、対戦チームが表示された。



「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」



 観客の歓声がひと際高く上がった。

 グループごとのチーム紹介が始まり、Cチームの番が来た。



C-2 チーム名 ギャラクティカ・ソルジャーズ


 P1 ツンギレ 

 P2 親指溶鉱炉

 P3 スパダリ

 P4 メリーバッドエンド

 P5 自サバ女



C-2には、既に固定ファンがついたようだ。


「ツンギレ! ヤッちまえ!」

「自サバ女! 血祭りにあげてやれ!」



C-4 チーム名 東京ジェット・ラベンダーズ


 P1 バブⅡ 

 P2 ケロ

 P3 ケッチ

 P4 ザリ

 P5 ペケJ



 シロミがC-4についてクロミに聞いた。


「クロミさん、C-4ですが、先ほどの予選ではスピード重視でしたが、今回はどうでしょう?」

「恐らく『ブルーアイズ対策』を講じて来ますね。ぐぬぬ、こざかしい!」

「クロミ、心の声、漏れてる……」


 各グループの紹介が終わった。

 ADが二人に『のばせ!』と書いたカンペを見せた。


「クロミ、特に注目してるチームって、どこ?」

「シロミさん……聞くまでも無いでしょう! 当然C-2『ギャラクティカ・ソルジャーズ』でしょう!」


「「「「うぉぉぉぉぉー!!」」」」


「確かに、レジェンド級を予選にぶつけて来る狡猾さは認めますが、この先、他のチームも間違いなくレジェンド級を召喚するでしょう?」

「当然、そうでしょうね? 私は、その辺りを加味しても、C-2に分があると思っています。何故って? ひいきしてるからです!」


「「「「うぉぉぉぉぉー!!」」」」


 クロミは、あからさまにC-2びいきを公言し、観客を煽った。

 ADが二人に『OK!』と書いたカンペを見せた。


「はい、準備が出来たようです! それではグループ代表戦、開始します!」



「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」



 テント内では、蘭子が各プレイヤーに指示を与えていた。


「土屋はコイツで、先輩はコレ。あとはさっきと同じでイイぞ!」

「おい、これって……」

「成程。そうきたか。面白そう♪」

「シズム、好きなように暴れてイイぞ」

「え? でもトドメはアニキ、お願い♪」

「よし、行くぞ!」


「「「「おー!」」」」


 最後のメンバーの設定が終了すると、『準備完了!』の表示が出て、すぐにカウントダウンが始まった。


「3・2・1 READY GO!」


「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」


 対戦が始まり、フィールドにそれぞれのポケクリが召喚された。

 グループCを注視している観客たちがざわめき始めた。

 

「「「「おぉ……?」」」」


 この状況に、クロミがすぐに反応した。


「おーっと! C-2、これはどういう事だぁ!? 初戦より明らかにパワーバランスがおかしいぞ!?」


 フィールドに降り立ったC-2のポケクリは、ブルーアイズを除いて、全て進化前のポケクリだった。

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