エピソード47-50
国分尼寺魔導高校 旧校舎裏――
絵の購入特典(?)として、ココナの機体に乗り込む事となった静流。
人気のない旧校舎裏に呼んだ『ラプロス』に乗り込む静流、ココナ、郁、ルリと、それを見送る睦美、左京、真琴、シズム。
「機体ってもうココにあるの?」
「うん。直ぐ目の前にあるよ」
真琴はキョロキョロと辺りを見回すが、それらしき物は見当たらなかった。
「見事な遮蔽能力だ。ココにあると言われないと、全くわからないな」
「睦美先輩はわかるんですか?」
「多分【真贋】を使えばわかるだろうな。ただ、やみくもに探せとなると、難しいだろう」
睦美は無駄に【真贋】を使わなかった。
【真贋】を使う事によって、知らなくても良い事まで知る事になるのを嫌がったのだろう。
「ちょっと静流? アンタにしか見えないの、ちょっとズルくない?」
「そんな事言われてもなぁ……」
真琴が不満げに静流を揺すり始めた。
それを見て、郁はメルクに聞いた。
「メルク、搭乗時のわずかな時間くらい、不可視化を解いてはどうだろう?」
〔待て………今、この周辺をサーチした所、ネコらしき小動物くらいの生命反応しか無かった。まぁ、少しなら良いじゃろう〕
そう言うと、次の瞬間、真琴たちの目の前に、大小二機のドラゴン型MT『ラプロス』が出現した。
「おわっ! びっくりした……恐、竜……?」
「ううん、ドラゴン型モビルトルーパーだよ」
「コレがMTなの? 静流の部屋で見た雑誌のMTとは全然違うじゃない!?」
「ああ、それはね、現行のMTのほとんどが二足歩行の、人型に近い構造なんだよ。これはね、ある遺跡で出土した残骸を復元したんだ」
静流の説明を聞きながら、真琴は呆気にとられていた。
睦美は、左京と機体を眺め、ぼそっと呟いた。
「実に壮観だ。カナメに見せてやりたかったな……」
「GM、コレってやはり、ロスト・テクノロジー……なのでしょうか?」
「そう考えるのが、自然だろうね」
数分の『お披露目タイム』が終わり、ココナが静流に言った。
「さぁ、乗り込もう! リア、機首を下げよ」
〔オーライ〕
クィィ……ン
壱号機はわずかな操作音を出しながら、コクピットがある頭部を下げ、搭乗時モードに変形した。
続けて零号機も搭乗時モードに変形し、キャノピーが跳ね上がった。 パシュゥ
「さてココナ、見せてもらおうか? 『補助席』とやらを」
「ああイイぞ。とくと見よ!」
そう言うとココナは操縦席に座ると、席の横に手をやり、何かを操作した。
「アジャスト!」ググゥン
すると操縦席の幅がみるみる広がり、二人掛けのベンチシート状に広がった。
「な、何と!? 操縦席が広がった?」
「どうだ郁? これなら二人、十分乗れるだろう? フッフッフ」
ココナはドヤ顔で、郁に自慢した。
画面にいるリアが、補足説明を始めた。
〔恐らくこの機能は、この機体に乗る操縦者の体格に合わせる為のもので、それだけ様々な人種が乗り込むという設計なのじゃろう〕
「成程。この操縦席なら、どんなに『安産型』であっても、フィットするだろうな」
郁は皮肉交じりにそう言った。
「さぁ、静流殿、こちらに」
「は、はい」
ココナに促され、恐る恐るコクピットに向かい、ココナの隣にちょこんと座った。
「静流殿、安全上、ちいとばかし密着させるぞ?」
「は、はい、お任せします」
「ア、アジャスト……」きゅうっ
ココナが操縦席の微調整を行うと、二人は密着した。
「ど、どうかな? コイツの座り心地は?」
(むふぅん、イイ香り……♡)
「問題ないです。でも何か、ちょっと照れるなぁ……」
「そうか? むふ、むふふふ」
ココナの顔が、みるみる緩んでいく。
その様子を見て、真琴が騒ぎ出し、郁はブータレた。
「何よあれ!? あれじゃあラブラブシートじゃないの……」
「ケッ、ココナの奴、デレデレしやがって……」
「あぁー! ココナちゃん、羨まし過ぎですぅ~♡」
零号機の後部座席に座ったルリが、体をクネクネしながらココナに言った。
〔ココナ、心拍数が急上昇しとるぞ? 大丈夫か?〕
「う、うるさい! 私は大丈夫だ!」
画面にいるリアがココナの異常を告げるが、ココナは顔を真っ赤にし、激昂した。
「リアって、そんな事もわかっちゃうんだ?」
〔パイロットの健康状態は、常に把握しないとな〕
静流は操縦席の座り心地を確かめながら、素朴な感想を述べた。
「でも、椅子の幅が変わるのって地味に高スペックですよね。長時間の張り込み時には、ちょっとしたベッドにもなりそうだし……」
「む? ベッド……とな? ぬふ、ぬふふふ……」
静流の言葉に過剰に反応し、緩みっぱなしのココナ。
それを見た真琴はココナを指し、物言いをつけた。
「あ! あの顔! アウトです! アウト!」
「まぁまぁ真琴クン、落ち付きたまえ」
「先輩!? 許すんですか? あの暴挙を?」
「大事なお客様だ。忍お姉様たちも、相当我慢しておられた様だし、ここはひとつ、大目に見ようじゃないか」
「ぐぬぬ、実に不本意ですが、今回は目を瞑りましょう」
「それでイイ。見たまえよ、静流キュンだって、嫌がっている様な素振りは見せていないだろう?」
睦美にそう言われ、真琴が静流を見ると、リアから計器類の説明を熱心に聞いている静流がいた。
「ふぅん、じゃあ背中のバーニアは、宇宙空間用なのか」
〔うむ。重力圏では必要ない。要は『見た目』じゃ〕
「見た目って……バーニア全開で飛ぶ姿は、確かに絵になるかも」
そうこうしている間に、郁が一号機に通信を繋いだ。
〔おい、長居は無用だ! そろそろ出発するぞ!〕
「了解した! 行くぞ、静流殿!」
「はい、お願いします!」
二機のキャノピーがゆっくり閉じていく。
搭乗者たちは、見送りの者たちに敬礼した。
「じゃあ、行ってくるねー!」
「静流! 気を付けて!」
ラプロスの頭部がせり上がっていく。全高はそれぞれ6mと10m程であるが、鼻先から尾までの全長は、それぞれ10mと15m程になる。
二機は羽根を広げ、ぐんぐんと高度を上げていき、空中で制止した。
「こういう時、帽子を振るんでしたっけ? いってらっしゃーい!」
左京は扇子を振りながらそう言った。
壱号機の操縦席で、静流が今更な事を言いだした。
「ココナさん、実は僕、高い所、あんまり得意じゃないんですよね……」
「問題無いさ。それを証拠に、今、怖いか?」
「全然怖くないわけじゃ無いんですけど、振動とか全く無いでしょ? この感覚、つい最近感じたのと似てるな……」
〔そりゃそうじゃ。お主はもう体感しておる。こ奴の夢の中でな〕
「そうか、【重力制御】を使っているからか」
静流はリアにそう言われ、ココナの夢の中でメルクの背中に乗って移動した時の様子を思い出していた。
「静流殿、それでは遊覧飛行を開始する。 郁、コースは先ほど送った通りだ。迷子になるなよ?」
〔了解した。 そのセリフ、そのまま返すぞ!〕
「ラプロス壱号機発進! 零号機、私に続け!」
〔了解!〕
シュンッ!
二機のラプロスは、暫く空中で制止していたが、突然視界から消えた。
「あ、消えた……」
「不可視化を使ったか、【ワープ】を使ったんだろう。とにかくこれで、軍の網には掛からない」
静流たちを見送った一同は、ラプロスが飛び立った空を、暫く見上げていた。
するとそこに、一人の生徒がこちらに走って来た。
「書記長? 今のはメメメ、メカドラゴンですの!?」ハァハァ
「イタコ? 帰ったんじゃなかったのか?」
「うっかり部室の鍵、掛けるの忘れちゃいまして、戻って来たらあんな物が空中に……」
イタコは未確認飛行物体を目の当たりにし、いささか興奮している。
「アレは軍の試作機だ。断じてUFO等のたぐいでは無い」
「軍の試作機? もしかして、アレに静流様が乗ってらっしゃるのかしら?」
「そうだとしたら、何か問題でも?」
「いえ、ただ以前、『ビジョン』が見えたもので……」
確かに以前、イタコはその様な予知夢を見ていた。
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