エピソード47-47

国分尼寺魔導高校 生徒会室――


 オークションが終わり、睦美の計らいで絵を落札したココナとその関係者たちが、生徒会室に通されていた。

 静流はHR後に生徒会室に行くよう、ムムちゃん先生に言われていた。


「「「失礼しまぁす」」」


 ドアが開き、静流、シズム、真琴が入って来た。


「「「きゃあん♡ 静流様ぁ~!」」」


 静流の顔を見た萌たちが、黄色い声を上げた。


「あれ? ミオ姉、佳乃さん、萌さん、美紀さん、真紀さん……イク姉、ルリさんに、ココナさんまで!?」


 ひとりひとり顔を確認し、ココナたちが来ている事に違和感を覚えた。 


「や、やぁ、静流殿。 また会ったな」

「ん? 待てよ、そんなはず……」


 静流は腕を組み、今の状況を整理した。


「やっぱおかしいよ。イク姉、どうやってココに来たの?」

「そう! そうなのよ静流クン! 私もそこに気付いた。 ダーナオシーとココじゃ時差があって、【ゲート】を使っても、オークションに間に合うはず無いのよ!」


 澪は、静流と意見が合った事で、ドヤ顔で疑問点を指摘した。


「ミオ姉が言った通り、ありえないんだよ、 イク姉!」

「それはな、静流。 私たちは『時空』を超えて来たのだ!」ビシッ!


 郁はそう言って、校庭の方を指し、決めポーズをとった。


「『時空』って、まさか……」

「そう。私たちは【ワープ】を使い、時間をもさかのぼって来た、と言う事だ!」ビシッ!


 郁はまた決めポーズをとった。


「静流様、こちらに注目ですよ。むふぅ」


 ルリはノートPCを立ち上げ、静流の方に画面を向けた。


〔よう静流! 任務達成だぞ、喜べ!〕

「メルク? って事は、組み上がったの? MT」

〔おう! バッチリ組み上がったぞ!〕


 画面に二体めのメルクが出て来たのに、静流は驚いた。


「あれ? メルクが二体いる?」

〔ああ。都合上分離した。 今はメルクとリア、そう名乗っている〕


 そんなやり取りをしていると、首に巻き付いて休止状態だったオシリスが、いきなり不可視化を解いた。


「ん? おかしな反応があると思ったら、何なのコイツら」

〔お前こそ何じゃ? いきなり現われおって〕

「私は有能な静流の相棒、オシリスよ」

〔何じゃ、ブラ公と同じしもべか。ワシは静流の親友、メルクとリアじゃ!〕


 メルクたちは、画面の中で両手を腰に当て、ふんぞり返っている。


「親友、ですって? 本当なの? 静流?」

「二、三日で親友レベルに昇格出来るかは置いといて、それに近い関係だとは思うよ」

「その根拠は?」

「だって、『主従契約』してないから。オシリスとブラムは契約したでしょ?」

「た、確かに……」


 静流に論破され、うかつにも納得してしまうオシリス。


〔それ見た事か。ワシはな、お前やブラムとは違う。五分の盃じゃぞ! ホッホッホ〕

「メルク、物騒な表現止めて。盃なんて交わしてないから」


 静流はすかさず否定した。


「何かむかつく、きぃー! ん? よく見るとアナタ、ドラゴン族の子かしら?」

〔元、な。肉体はとうに滅びた〕


 オシリスは何かを思い出そうとしている。


「ちょっと待ってよ、遠い昔、ブラムちゃんから聞いた事がある。岩みたいに硬いドラゴンがいるって……」

〔フン、知っておったか。いかにも、ワシは……〕

「そう! 岩石イワオ! アナタそうでしょう?」


 ブラムは手をポンと叩き、思い出してスッキリした顔をした。


「違う! ワシはメルクリアじゃ!」


 オシリスとメルクたちは、勝手に話を始めた。


「私も魂だけになって、この器に受肉したクチなのさ。ちなみに元、精霊族なの」

〔精霊族だと? 絶滅危惧種じゃろうが?〕

「色々あってね。静流がお世話になった様ね。ありがとう」

〔そう言う事だ。これからもよろしく頼む〕


 どうやら打ち解けたようだ。


「メルク、じゃあここにはあの機体で来たの?」

〔うむ。自分の目で見るがイイ。そこの運動場にあるじゃろ?〕


 メルクにそう言われ、静流は校庭を見渡すが、それらしき物は見当たらなかった。


「ん? ドコにあるの? わかんないよ」

「無理も無い。『不可視モード』で待機させているからな」


 キョロキョロ見ては首を傾げている静流に、ココナが声をかけた。


〔静流、お主のメガネに、『光学迷彩キャンセラー』が付いておろう? 使ってみろ〕

「そんな事、何で知ってるの? これかな?」クリ


 静流がそれらしきボタンを操作するが、特に変わった事は起きなかった。 

 依然キョロキョロしている静流に、メルクが言った。


「んと、何も見えないけど?」

〔上じゃ、上!〕


 メルクに言われ、上を見た瞬間、静流は度肝を抜かれた。


「えっ上? うわぁっ!? う、浮いてる?」


 空中に、大小二機のドラゴン型MTが空中で待機していた。

 ココナの機体は、全高6mの静流の機体より一回り大きく、10m程の大きさであった。


「うわぁ……思ってたのより、大きいな……」

「何分目立つのでな。領空に入る許可は少佐殿がとってくれたが、それが有効になるのはあと数時間後だろう」


 ココナの補足を聞きながら、食い入るようにMTを見つめている静流。


「壮観だな……見たまんま、メカドラゴン、ですね」


 目をキラキラさせながらMTを見ている静流に、ココナが声をかけた。


「そうだ静流殿、アイツに名前を付けてくれないだろうか?」

「えっ? 機体の名前、僕が付けてもイイんですか?」

「是非ともお願いする。好きにするがイイ」


 ココナにそう言われた静流だが、悩む様な仕草は無く、真っ直ぐにココナに向かって言った。


「これを見た時、ピンと来たんです。『ラプロス』一択でお願いします」

「ふむ。由来を聞いても?」

「大昔の漫画に、陸海空のしもべを従えた超能力ヒーローものがありまして、そのイメージが浮かんだんです」

「ああ、『ビビル4世』からひねったのですね? 空を守護する者『ラプロス』イイじゃないココナちゃん、頂いちゃいましょう♪」


 静流の提案に、ルリがノリノリで賛成したので、ココナは大きく頷いた。


「よし! 静流殿の機体は、私の機体より前に製造されたものであるから『ラプロス零号機』とし、私の機体は『ラプロス壱号機』としよう」


 自分の案があっさり通ったので、静流は満面の笑みを浮かべた。


「うわぁ、素直に嬉しいです!」パァァ


「「きゃっふぅぅ~ん♡」」


 ココナとルリは、静流の渾身のニパをまともに食らい、大きくのけ反った。


「くはぁ、たまらん」

「はぁぁ。癒されるぅ……」


「よかったじゃない静流。アンタのネーミングセンス、壊滅的だもんね」

「べースがあったからよかったんだ。一発で採用なんて、信じられないよ」


 真琴にそう言われ、後頭部を搔きながら照れる静流。

 和やかなムードだった生徒会室であったが、突然ドアが勢いよく開いた事で、一同に緊張が走った。バァン!


「むっ、何者だ!?」


 入って来たのは、フード付きローブに身を包んだ、四人の女性らしき者たちであった。

 その一人が、ココナを指さし、叫んだ。


「エロ将校! どうしてアンタがココにいるの!?」

「ん? お前は……」


 フードからチラッと見えた顔に、ココナは見覚えがあった。 

 静流はこの四人がすぐにわかった。


「忍ちゃん!? と、お姉様たち?」

「静流ぅ、やっと会えたわぁ♡」むぎゅ


 薫子は、静流と目が合った瞬間に静流に飛びつき、抱きしめていた。

 あまりの早業に、真琴は驚愕した。


「薫子さん!? いつの間に?」

「薫子お姉様、く、苦しい……」

「ああ、ずぅっとお預けだったのよぉ? 暫くこのままでお願ぁい♡」むぎゅう


 静流の抵抗もむなしく、薫子は周りにお構いなしに静流を抱きしめた。


「静流ぅ、静流ぅ」

「薫子!? ズルい!」


 忍は薫子に負けじと、静流に抱き付いた。


「ふぐぉ!?」


 睦美は四人が入室して来た事に、特に驚いた様子もなく挨拶した。


「お姉様方、ようこそ生徒会室へ」

「おうムッツリーニちゃん! さっきの司会、サマになってたぜ!」

「お褒め頂き、恐縮です。リナお姉様」

「睦美、静流さんの『自画像』、この方が落札されたの?」

「はい、雪乃お姉様。こちらの竜崎ココナ様が落札されました」


 睦美は雪乃にココナを紹介した。

 もがいていた静流が、驚きの声を上げた。


「ええ!? あの絵をココナさんが!?」

「ああ買ったぞ! キミの絵を!」

「正確には、自画像じゃなくて、似顔絵なんですけどね……」


 静流は、恐る恐るココナに聞いた。


「それで、いくらで買ったんです?」

「なぁに、ほんの一千万円だ!」



「「「へ? ええ~っ!?」」」



 落札金額を知らなかった、静流、真琴、シズムは、一千万円という金額に驚きを隠せなかった。

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