エピソード35-6

ククルス島 統合軍海上基地 保養施設内 三人部屋 ――

 

 現在三人部屋には、静流と真琴・美千留組がいた。


「夕食までまだ時間あるな。僕は内風呂でイイから、みんなは露天風呂にでも行って来なよ」

「しず兄、せっかくだから行こうよ、混浴かもよ?」

「何でも絶景ポイントがあるらしいわよ? そう言うの好きでしょ? 静流」

「何ィ? 確かにパンフにあったっけ。わかった、行こう」

「よっしゃあ」


 何とか静流を露天風呂に誘導出来た二人は、ハイタッチして喜びを分かち合った。




              ◆ ◆ ◆ ◆



露天風呂 ――


 静流たちが露天風呂に到着した。入口は男湯と女湯に分かれている。


「混浴じゃなさそうだね。よかった」

「ちぇ、残念。行こう、真琴ちゃん」

「うん。じゃあ静流、ごゆっくり」

「そっちもね。のぼせない程度にしなよ?」


 男湯の入口にある暖簾をくぐり、中に入る。

 脱衣所で浴衣を脱いでいると、露天風呂のエリアマップが目に入った。


「フムフム。なるほど。ココが絶景ポイントか。ん?」


 マップの絶景ポイントを見つけた静流だが、妙な一文が気になった。


『満天の星空を眺めながらの愛の断崖絶壁』


「ここだけ混浴になってる。うわ、怖そう」


 丁度男湯と女湯の間にある『赤壁』が、海側ギリギリで個室のようになっている。

 その下は海面まで数十メートルはあろうかと言う崖になっていた。

 そこで恋人同士が絶景ポイントを愉しむのであろう。




              ◆ ◆ ◆ ◆



露天風呂 女湯 ――


 真琴と美千留が女湯に入った。

 さっと体を洗い、湯船に浸かる。すると、


「ふう。あ、どうも」

「あら? 真琴さんに美千留ちゃんじゃない」

「幼馴染と妹か。静流めはどうした?」


 アマンダとイクであった。


「アイツなら、隣にいますよ?」

 

 真琴は親指を立て、男湯を指した。


「真琴さんは行かないの? アッチ」


 アマンダは例のエリアを指した。


「静流めの裸なんぞ、まあ見慣れてるんだろ? お前たちは」

「小さい頃の事ですよ。ねえ、美千留ちゃん?」

「私は最近のもチェックしてるけどね」


「だったらイイのかな? 私がご一緒しちゃおうかしら?」ムフゥ

「私も行くぞ。減るもんじゃないしな。ハハハ」


 二人はノリノリであった。するとそこに、


「いやぁ、広いお風呂はたまらないでありますなぁ」

「佳乃? アンタはすぐ開放的になって、恥じらいってもんが、あら? 隊長?」

「少佐殿、真琴殿に美千留殿も」

「いよぉ、澪に佳乃か」

「お疲れ様です。お二人共」


「そう言えば澪はわかるんだよな、真琴は」

「ええ。よく覚えてますよ」

「私も何度か見た事あるかも」


「その節はどうも。澪さん?」ニコ

「いえいえこちらこそ。真琴さん?」ニコ


 二人共顔が引きつっている。


「お姉さんって、しず兄を餌付けしようとしてたひとでしょう?」

「う。確かに見ようによってはそうかも、って違うよ!? 部活で作ったお菓子を、静流クンに味見してもらってたの」

「でも帰り道、逆だったじゃん」

「い、イイじゃない、『若気の至り』ってやつよ」


 美千留の鋭い指摘に、澪はワナワナと言い訳を並べている。


「隠す必要無いですよ澪さん。もうわかってますから」

「さすが真琴殿は『アルティメット幼馴染』でありますね。達観しておられる」

「そんなんじゃないですよ。わかっちゃうだけです」


 そんな事を話していると、イクが行動に移した。


「イイのか? 先に行くぞ」パシャ


 イクは例のエリアに泳いで向かっている。


「次は私の番ね。ホホホ」パシャ


 イクに次いでアマンダも続く。


「こうしちゃいられない、行くわよ美千留ちゃん」

「わかった」



              ◆ ◆ ◆ ◆



露天風呂 男湯 ――


 男湯で体を洗い、湯船に浸かった静流。


「ふう。気持ちイイ。やっぱ来てよかったぁ」


 静流は縁の岩にもたれ、伸びをしている。すると、


「おーいしず兄、絶壁エリアに行くよ!」


「お前、あのエリア、混浴だぞ? カップル限定じゃないのか?」

「そんな事、書いてなかったよ?」

「兄妹ならイイか。わかった。今行くよ」




              ◆ ◆ ◆ ◆




露天風呂 混浴エリア ――


 静流は混浴エリアに着いた。個室にはなっているが、間違いがあっては困るのか、中央にがっちり赤壁が入っている。

 赤壁の中央に窓があり、シャッターが閉まっている。


「おい、美千留、着いたぞ」

「顔見せてよ、しず兄」


 美千留がそう言うので、静流がシャッターを上げる。すると、


「よぉ、楽しんでるか? 静流ぅ?」

「イク姉!?」


「私もいたりして」

「アマンダさん!?」 


 妹ではなく、意外な面々に驚いていると、


「静流クン、お疲れ様」

「お疲れ様であります! 静流様」


 続いて澪・佳乃コンビが顔を出した。


「一体何人いるんです? 美千留は?」

「ココにいるよ。真琴ちゃんも」

「結構、窮屈よね?」


 男女1人ずつ入るエリアに、かたや6人入っているのだから、窮屈なのは当然である。


「僕は絶景を見に来たんですよ。ほっといて下さい!」

「それは失礼。ではごゆっくり」


 隣が静かになった。冷やかしに来たのだろうと思い、絶景を愉しむ事とした。

 見渡す限りの水平線に、太陽が沈んでいく所だった。


「うわぁ。こりゃあ確かに『絶景かな』ってやつだね」

「夜になると、星が綺麗、なんだって」


 誰もいないと思っていた隣から、誰かの声がした。


「真琴……か?」

「ねえ、夜になったら、またココに来てくれる?」

「……イイよ。僕も観たいから。満天の星空」


 太陽が完全に沈む様を見た後、二人は露天風呂を出た。

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