エピソード27-2

統合軍 極東支部 薄木航空基地 第7格納庫――


 今回の作戦に使用する機材や隊員の荷物を、インベントリに収容した。


「それでは皆さん、今からアスガルド駐屯地に行きます」


 静流は次の転移先を説明した。


「うむ。アスガルドか。私の最初の赴任先であったから、懐かしいのう」

「【転移】なら一瞬でありますゆえ、さぞ驚かれるでありましょう!」

「仁奈先輩とリリィ先輩か。素敵になられたんだろうなぁ」

「私は初めてだから、よくわからないわね」

「イイ所ですよ。夏でも涼しいし」

「静流様、仁奈先輩に軍事衛星電話にて、1400時に着くと連絡を入れておいたであります」

「ありがとうございます! 6分後ですね?」


 静流が時計を見て、転移の準備を進める。


「はいはい皆さま方、どうぞズズズイっと」


 佳乃は隊員たちをキャンピングカーに乗せた。


「静流様、準備オーケイであります!」

「よし、ロディ、収納」

「承りましたぁ」


 ロディと呼ばれたシズム似の女の子は、キャンピングカーをポシェットに収納した。 シュウゥ


「うわぁ、どうなってんの?コレ」

「某ネコ型ロボットみたい」


 双子は、ロディがキャンピングカーを収納する所を目の当たりにして、驚愕した。


「すいません、急いでるんで、今度ご説明しますね」



「「はぁい、静流様ぁ」」



 静流にそう言われた双子たちは、とろけそうな顔でそう答えた。


「目標、アスガルド駐屯地、座標確認!」


「オッケーよ! 静流」


「では、行って来ます」ビシ


 静流が双子たちに裏ピース敬礼をしながら、キャノピーを閉めた。


「オシリス、魔法陣、展開!」


「オーライ」ブーンッ


 オシリスが魔法陣をバギーの下に展開した。


「カウントダウン始めます。 10秒前! 9、8、7……」


 ロディがカウントダウンを始めた。


「5秒前! 4、3、2、1、ゼロ!」


 「【転移】!」ブンッ

 

 静流とロディを乗せた小型バギーは、残像を残し、消えた。


「うはぁ、スゴ、マンガみたい」


「やっぱイイわぁ、静流様って」





          ◆ ◆ ◆ ◆





アスガルド駐屯地 魔導研究所 格納庫――午後


「さっき佳乃から電話で1400時に着くって言ってたよね?」

「ええ。もうそろそろだわ、レヴィ、行くわよ」

「はぁい、只今」


 レヴィは別件でたまたまここに来たのを、大佐が呼び止め、今回の作戦に加えた。

 三人は頃合いになったので格納庫に向かった。


「来たわね、こっちは準備万端よ?」


 技術少佐のアマンダは、今回の総指揮を担当する。


「レヴィ、今何時?」

「一分前です!」

「さぁて、そろそろかな?」

「いきますっ。10秒前! 9、8、7……」


 レヴィがカウントダウンを始めた。


「5秒前! 4、3、2、1、ゼロ!」


 ブーンッ

 

 まるで不可視モードを解除した時の様に、上から実体化していく。


 シュゥゥ


 バギーのマフラーから、水蒸気のような煙が少し出た。


 パシュウ


 キャノピーが跳ね上がり、ヘルメットを被った静流が現れた。


「あ、皆さん! ただいま帰りました!」

 ヘルメットを脱いで髪を搔き上げる静流。


「静流様! ムハァ……素敵」


 レヴィはいつも通り、同じリアクションをとった。

 座席を立ち、静流はレヴィがいる事に気づき、近付いた。


「あ、レヴィさん、こちらに来てたんですね? お疲れ様です!」

「このような重要なミッションに参加出来るなんて……幸せです」

「頑張りましょうね、お互い」

「はい! 頑張ります!」

「お帰りなさい、静流クン」

「待ってたよぉ、その後、調子はどうかな?」


 二人のお姉様に言い寄られている静流。


「え、ええ。絶好調……ですよ? ロディ、出して」

「がってん承知!」


 シズムがどこで覚えたのかわからない返事をして、インベントリからキャンピングカーを出した。


  ズズゥン


 ドアが開き、


「お二人とも、お疲れ様であります!」

「先輩方! お久しぶりです!」


 キャンピングカーから佳乃と澪が出てきて、先輩ズに挨拶をした。


「あら、澪じゃないの、久しぶりね?」

「相変わらずムチムチでボリューム満点ね?」

「んもう、リリィ先輩ったら、セクハラですよ。今の」

「久しいの、皆の者」


 続いて出てきたのは、隊長だった。


「榊原中尉! 御無沙汰しております!」

「お変わり、無いみたいですね? 中尉殿」

「うむ。お前たちもな」


 先輩ズは隊長とは知り合いのようだ。すると、


「あら、珍しい生き物がいるわね?」


 アマンダが隊長の所に寄って来た。


「技術少佐殿か、相変わらずであるな」


 二人は見つめ合った。しかし少佐と隊長では頭1.5個分は隊長の方が低かった。


「そう言えば、アナタが来るって言ったら、えらくはしゃいでる人が若干一名いたわ」


「何? 面妖な。はっ、まさか」


 遠くから近づいて来る影がある。ドドド 



「イクちゅわぁぁぁぁん!!」



 春山所長が興奮度MAXで駆け寄って来た。


「げ、所長であったか。まだくたばっとらんかったのか? ジジイめ」

「むほぉ。イクちゃん、相変わらずカワイイね。ん?そこにいるのは……シズムちゃんではないか!」


 所長は隊長をそっち退けでシズムに近寄ろうとした時、


「はいお終い。帰って仕事しますよ」


 所員が二人がかりで連れていく。


「何をするんじゃ! 放せ!」ジタバタ

「いつも通り所長は置いといてイイわ。静流クン、一服したらブリーフィング、始めるわよ!」 

「はい! お願いします」

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