第148話隊士一同の贈り物

朝食後、隊士達は珍しく居室から出てこない。詩織は不思議に思ったが、忙しさに負けて隊士達の事は何も思わなかった。


「小野田家で一番の我々に対する功労者は誰であろう」


各々おのおのが活発に議論を始めた。意見が分かれた。


「ここは祐介殿であろう」


「いや、チヨ殿であろう」


「詩織殿も頑張っておられる」


意見が違うが近藤は制した。


「諸君。小野田家の一人一人を選ぶのではない。小野田家の皆さんに礼をするのだ」


近藤の意見で意思は統一された。次は贈り物についてである。やはり揉めた。


「欲しいものを聞けば良いんじゃないですか」


沖田がそう言うと土方が


「総司よ。それでは贈り物ではなくて、単に欲しかったものを贈るだけではないか」


もっともである。


「これ以上は不信感を小野田家の皆さんに不安を与えるので解散する」


何事も無く、自然なフリをしているが何やら視線を感じる小野田家の面々は不思議に思った。


数日後。小野田一家は隊士一同に呼び出された。道場に隊士が端座たんざしている。何事かと思った小野田家であったが、次の瞬間に笑顔に変わった。近藤が言う。


「我々がこうして現代にて安心して過ごせるのも日々お世話になっている小野田家の皆さんのおかげです。今日はささやかながら日頃の感謝を込めて贈り物をしたいと思います」


「あら、すてきなマリミッコのエプロン」


薫が喜んだ。土方が選んだ。


「これはいいネクタイだ」


祐介はお気に入りにする事にした。シルクの高級品である。


「おやおやこんなに。ありがとうね」


チヨには煙草を五カートン。沖田が銘柄を覚えていた。


「わぁ、スニーカーだ」


詩織にはスニーカー。サイズは斉藤が知っていた。


「細やかではありますがどうかお受け取り下さい」


近藤が言うや、チヨが言った。


「ありがとうよ。でも無理したんじゃないかい?」


皆で持ち合わせた。沖田が言う。


「チヨさん、それは野暮やぼってものですよ」


皆で笑った。

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