第140話フィットネスクラブ

「現代では機械を使って体を鍛えるそうだ。諸君、行ってみないか」


近藤の一言でフィットネスクラブへ行くことが決まった。祐介を筆頭に二十四時間オープンの所にした。夜遅くに来たので空いている。


「ほう、このような機械で体を鍛えるわけですか」


マシンには使い方の説明が書かれていて、隊士達でも理解できた。沖田が言う。


「すごいですよ、あの機械。走ると床が動くんです」


ランニングマシンは何台もあって皆で一緒に走ってみたりした。休憩をはさみつつそれぞれの機械を隊士達は使っていく。祐介が近藤に尋ねる。


「如何ですか」


「いや、これで本当に体が鍛えられるかと疑問に思いましてな」


「何故そう思われるのでしょうか」


「我々の場合、剣と言う合致がっちした目標があります。しかしここの場合、どのように、どんな風に体を鍛えたいのか、目標が見えません」


なるほど、と祐介は思った。漠然と来て、筋肉が付くだろうとマシンを扱い、成果が実感できないまま疲れて帰る。しっかりとした動機と目標、強い意志が無ければマシンも十分に使いこなせない。


「なかなかのものばかりですが、どうだろう、なにか満足できない」


永倉が言う。隊士達は休日を除いて毎夜稽古をしている。激しい稽古である。そこには剣技を磨き、任務をまっとうするという確たる目標、あるいは信念がある。隊士達は死線をかいくぐって来た。厚い胸板や太い腕を自慢するために剣を使って鍛えるのではない。あくまで任務をまっとうするためだ。


「どうだ諸君。現代の鍛練は」


「現代ですから研究された機械でしょうが今一つ物足りない気がします」


吉村が言った。


「こういった場所は現代人に任せて、我々は何時も通りの稽古をすれば良いのでは」


斉藤の意見に一同は賛同した。現代と過去の見解の違いだろうか。祐介はこの差異を興味深く思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る