第132話斉藤食べ歩き「串カツ」

毎度のごとく斉藤はウロウロしていた。宵闇よいやみは酒を求める人々で賑やかになってきた。斉藤の目に飛び込んで来た串カツという大きな暖簾のれんが見えた。何時もそうなのだが斉藤は新しい店に入る際は勇気を出して入っている。

この時間帯では客もまだ入っていない。カウンターに座る。ビールを頼み、メニューにあるおすすめほろ酔いセットを頼んでみた。何種類かを店が日替わりで客に提供するようだ。いちいち迷わなくて済む。突き出しでキャベツが出た。バリバリと齧っていると早速出てきた。イカだそうだ。


「熱いがイカを上手く衣で包んである」


ソースの二度付け禁止と書いてあるが、ソースなしの方が味を楽しめそうなので斉藤は使わない事にした。ビールを楽しみながら次を待つ。


「おまたせしました。エビです」


詩織と同じくらいの給仕が運んできた。調理場から直接カウンターに渡せば良いと思うのだが油が客に飛ばないように考えているのだろうか。


「海老も美味である」


大きなエビフライは食感、大きさもあって斉藤に不満が無かった。ゆっくり、店がタイミングを見計みはからいながら揚げるようだ。続いて野菜も運ばれてくる。


「この細長いものはなんだね」


「アスパラガスです」


噛み応えがあって、野菜の香りが口の中に広がる。美味である。単品で頼むよりお任せで店に頼む方が初見で店に入るのは良いようだ。


「後何品出るかね」


「後二品とデザートです」


ビール一杯といい塩梅あんばいの量である。勤め人が帰宅の際に少し酒が飲みたい時には便利ではないだろうか。小腹が満たされ満足した斉藤は客が入って来たのを察してそろそろ勘定してもらう事にした。


「いくらだね」


「二千五百円になります」


安い。お得である。今度永倉を誘ってみよう。

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