第116話漫才

「ア~ッハッハ、ヒィ~」


沖田の笑いが止まらない。日曜日になると沖田は小野田家の居間にやって来てテレビを観る。お目当ては漫才、コントである。腹がよじれてしまったようだ。笑いの輪が広がって居間が賑やかになってくる。そこに永倉や原田が入ってきて更に賑やかになってくる。


「笑いで死ぬかと思いますよ」


詩織の入れたお茶を飲みつつ小野田家の居間に居残る。この明るい好青年を小野田家は嫌いではない。


「沖田さんよ、笑い過ぎも体に悪いよ」


チヨがそう言うと


「いやあ、僕は大丈夫です。この番組がいけないんです」


言い訳をしつつ毎週日曜になると、居間にやって来るのだ。恐れられた一番隊隊長とはとても見えない。


「こら、総司。いい加減にバカ笑いはよせ」


土方が注意したが


「笑いが法度に触れるなら僕なんてもうとっくに生きていないですよ」


沖田がそう返す。沖田は一番隊隊長という重責から解放されたのか積極的に現代の文化を吸収している。漫才もその一つだった。最初、小野田家の居間でお茶を飲んでいた沖田は流れている漫才が耳に入ってお茶を吹いた。それからは漫才やコント、お笑いの番組がある度に居間で笑い転げている。


「いやぁ、今回の新人はいいとこ行きますよ」


「沖田君、君は買いかぶり過ぎだ」


原田が言うと


「原田さんにはこの笑いの良さがわからないんですよ」


と切り返す。チヨは


「まあ笑い転げるくらいは良いんだけど喧嘩はいけないよ」


と沖田に釘を刺した。すみません、と沖田はびる。隊士一同が来る前は週末の夜など静かなものだった。それを思えばこの賑やかな居間も悪くはない、とチヨは思った。沖田は漫才のボケを真似まねて見せて詩織に突っ込ませる。二人ゲラゲラと笑うのだった。

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