第101話斉藤食べ歩き(お好み焼き)

斉藤には常々気になっていた店があった。


「お好み焼き」


とのみ書かれた暖簾のれんが掛かっている。斉藤は入ってみる事にした。席のみでカウンターはない。とりあえず空いている席に座った。鉄板がはめ込まれた机は使いこまれていて、さび一つ無い。お品書きを手に取り何を頼もうかと悩んでいると妙齢の女性が


「決まったら呼んでくださいね」


と声を掛けてきた。とりあえずビールは頼むとして迷ったがイカ玉と焼きそばを注文する事にした。店員に手を上げると注文を取りに来た。


「ビールとイカ玉、焼きそばですね、少々お待ちください」


店員が何やら鉄板にしたみたいだ。しばらくすると鉄板が熱を持ってきた。どうやら鉄板に火を着けたようだ。しばらくするとビールが来た。こう言った時は少しずつビールを飲み、待つ方が良いと斉藤は経験しているので少しずつ飲みながら待った。後ろの席は賑やかで、席も満席になった。昼食時でもあるし、良い時に席につけた。


「はい、イカ玉です」


お好み焼きがやって来た。以前詩織と食べたパンケーキに似ている。店員はコテをどうぞ、と小さな鉄板と小皿、割り箸を机の縁に置いた。


「どう食べれば良いのですか」


店員は驚いたが、説明してくれた。


「ソースがそこに有るのでお好みで付けてください。鰹節と青のりもお好みで。そしてこのコテで食べやすいように切り分けて食べてください」


なるほど、パンケーキで言うナイフのようなものか。とりあえず適当な大きさに切り分け、ソースと鰹節、青のりを乗せて食べてみた。特別美味ではないが、ビールとは相性が良い。具材にイカが入っており、食感と味が口に広がる。ビールで流し込みつつ味わっていると焼きそばが来た。


「腹も満たされ、安価である。察するに庶民の味であろう」


会計を済ませ店を出た。もうすぐ春である。

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