第87話帰れない

道場に座り、近藤は考えにふけっていた。


「帰れない……」


それだけが近藤を悩ませるのだ。現代の科学をもってしても解明されていないという。インターネットで調べていても答えは同じだった。しかし考えたらかと言って帰れるものではない。


「何とか帰れる手段を見つけねばなるまい」


近藤は帰れると信じている。何故なら現代において新選組が存在しているからだ。残されている文献を見ても、近藤はちゃんと書籍に書かれている。肝心なのはであった。明日か、半年後か、一年後か、果たしてそれ以上か…近藤にもそれは解らない。


「こちらに来てもう三月か」


短いようで長い月日を重ねてしまった。しかし近藤は手をこまねいている訳では無い。図書館で本を借りるにしても架空の話ばかりで参考にならない。手がかりと言えば祇園からの帰り道、突然意識を失った事だ。


しかしそれだけでは情報が不足している。何か変化が無かったか隊士一同に聞いても同じで有力な情報が得れない。土方もこの件には何か考えが有るらしく


「局長、真剣に帰る算段をしないといけませんぞ」


しかし何とも出来ないのである。


「仕方が無いのだ歳。タイムリープと言うのは架空とされていて、現実には不可能とされているのだから‥」


図書館でもタイムリープに関する書籍も無い事は無かったが、内容が難解な上に、やはり実現には程遠い事がわかった。


「やはりあの時、祇園などに行かねば良かった」


どうしようもない事につい、クヨクヨと考えてしまう。他の幹部も残っているはずだから組織の運営には問題が無いはずだ。しかし確実に言えることは近藤自身に起こる出来事も変化するはずである。

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