第73話斉藤、モデルになる

「はい、はい、伝えておきます」


詩織が電話を取っている。話を終えて斉藤を探した。斉藤は道場で素振りをしていた。


「斉藤さん、モデルの仕事の連絡がありました。やりますよね!」


詩織は強引だ。


「金になるのか」


「ちょっとしたお小遣いになりますよ」


「承知した旨、伝えてくれ」


そう言うと詩織は飛ぶように居間に消えた。嬉しそうだ。


「斉藤君、何かやるのですか」


「モデルと言う小遣い稼ぎです」


良いなぁ、と沖田は言った。


当日、詩織が付き添ってくれて撮影所までやって来た。


「詩織ちゃん、ありがとう。斉藤さん、よろしくお願いします」


丁寧な応対に


「よろしくお願い申す」


木下と言う担当者は古い言葉を使う斉藤を不思議に思ったが、仕事の打ち合わせに入った。春物の紹介の撮影で、華奢きゃしゃなモデルが多い中、体格の良い斉藤に白羽の矢が立った訳だ。さっそくコーディネーターが斉藤に試着をさせ始めた。詩織と木下の予想通り、ハイブランドの服が良く似合う。


「顔も良いし体格も良い。逸材ね」


どんどん着替えては撮影される。詩織が普段決して見ない笑顔も斉藤は見せた。撮影は昼休憩を挟んで午後まで続いた。無事、撮影が終わった。木下は斉藤を褒めた。


「斉藤さん、お仕事お疲れ様でした。これも何かのご縁。これからもよろしくお願いします」


「いえ、こちらこそ有難うございました。これからも宜しくお願いします」


斉藤は丁寧に挨拶した。帰り道、斎藤は詩織に言った。


「これほど疲れるとは思わなんだ。詩織殿はよくやっておるわ」


斉藤は疲れた声を出した。


「珍しい。斉藤さんが疲れるなんて」


詩織は掲載が楽しみですね、と言った。翌月、斎藤の載った雑誌を詩織が買ってきた。斉藤が写っているのを見て隊士一同が回し読みした。


「斉藤君は稼ぎ口を見つけたようだな」


近藤は斉藤と雑誌を見比べて言った。

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