第29話沖田、病院の暴漢を制する

沖田は病院内の移動を許可された。マスクをしての移動である。退屈でもあったし、時間はいくらでも有るので散策をすることにした。病棟の地図を見ても良くわからない。複雑に入り組んでいて、飽きる事はなさそうだ。エレベーターは何度も乗ったので使い方を覚えている。総合病院の一階だから賑やかだろう。沖田はふらふらと散歩をした。


一階へやって来ると何やら騒がしい。見ると包丁を持った男がカウンター前で暴れている。何やら揉め事が起きたらしい。沖田は近くに居た老人に杖を借りる事にした。


「すみません、おばあさん、ちょっと杖を拝借はいしゃく


スタスタと沖田は男に詰め寄った。興奮している男は凄まじい形相で沖田を睨み、襲い掛かって来た。沖田は少し屈んだ。刹那せつな、男は昏倒した。沖田の突きは男の鳩尾みぞおちと喉を突いた。周囲には何が起きたかわからなかった。警備員に押さえられた男は失神している。


「いやあ、急所は避けましたよ。まあ苦しいでしょうが死にはしないでしょう」


入院着でスタッフと話をしていると警察官がやってきた。これ以上はたまらないなとおばあさんに杖を返し、病棟に帰る事にした。病棟に着き、ベッドで横になっていると看護師がやって来た。


「沖田さん、暴漢を取り押さえたんですって?」


「いや、まあ、たまたまですから」


その後、院長とやら偉い人達がお礼にやって来たが沖田は困ってしまった。沖田は目立つのが嫌いなのであった。

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